株式会社プロベル
代表取締役
竹村 優 氏
たけむら・ゆう/2013年愛知大学経営学科卒業後、株式会社マイナビに入社。2年半で全社MVPを獲得し、新卒3年目で課長職に就任。2016年9月に株式会社オーサムエージェントを起業し、2022年11月にじげんグループへM&A参画。2025年4月に株式会社プロベルを起業し、「人」で外注先を探せるビジネスマッチングサービス『プロベル』を展開。
INSIGHT SUMMARY
- 連続起業家の原点: マイナビ最速課長昇進、ドラピタ立ち上げ、コロナ赤字からの最高益更新、そしてじげんグループへのM&A参画。大手資本の1→10も経験した上で、「頭を絞って泥臭く立ち上げる0→1こそが性に合っている」と再び起業へ。
- 1商談課金(マッチング)の破綻という想定外: 「1商談〇万円」のマッチングモデルは、ニーズが固まった案件しか受け入れられず、集客コストに対して人件費が嵩み構造的に赤字化。1年でその限界を見抜く。
- アジリティ溢れるピボット(解決策): 「4割AI×6割人」の体制でSEO・生成AIの検索潮流に最適化した比較・レビュー記事を3年で10,000本量産していく。前課金の広告掲載モデル×成果報酬を融合させ、誠実な「人」と「会社」が正しく発注されるBtoBインフラを構築する。
最速で社長になるために鼻息荒く働いたマイナビ時代
――竹村さんのキャリアの原点についてお伺いします。新卒でマイナビに入社された当時から、すでに起業を志されていたそうですね。
プロベル 竹村 氏(以下、竹村 氏): はい、学生時代から起業家を目指していました。「最速・最短で社長になるためには何をしたらいいのか」を考え抜いた結果選んだのがマイナビでした。
選んだ理由は明白で、まずガッツリ働ける環境だったことです。何もない自分が会社を作って成長させていくためには、まず圧倒的な営業力が必要不可欠。書籍やノウハウだけでなく、経営に最も近い”採用”を通じて、様々な業界の経営者と直接対話ができると考えたんです。
入社後は1年間で本当にガッツリ2-3年分働いた自負があります。そこで全社MVPを獲得し自信をつけて、入社2年半で「独立します」と伝えました。会社からは「早すぎる、マネジメントを経験しなさい」と引き止められ、1年間課長職を務めたのちに社会人3年半で独立を果たしました。
失敗から学んだニッチ一点突破。ドラピタ全国展開の軌跡
――独立後、最初は求人広告の代理店からスタートされたのですね。
竹村 氏: 求人広告代理店として最初の1ヶ月目の売上が200万円、2ヶ月目が400万円後半と売上自体は順調でした。ただ、自社で独自の価値を生み出すビジネスに挑戦したい思いが強くあり、自社求人メディア『ピッタシ』を立ち上げたんです。
これは職場を条件ではなく「働きがい」や「一緒に働く人」で選ぶというコンセプトで、今のWantedlyに近い構想でした。しかし、見事に見当違いの大滑りをしまして(笑)。
――何が一番の誤算だったのでしょうか?
竹村 氏: ターゲットを絞っていなかったことです。企業側も求職者側も範囲が広すぎて、僕らのような弱小営業会社には投資効率が悪く、どこにリソースを投入すべきか分かりませんでした。
その猛省を生かして作ったのが、ドライバー専門求人サイト『ドラピタ』です。今度は真逆に振り切り、「愛知県小牧市のドライバー求人」という超局所ニッチに絞って一点突破しました。小牧市は物流量が非常に多く、ドライバーの絶対数がずば抜けて多いエリアだったからです。
【ドラピタのエリア展開戦略】
- Phase 1(愛知県小牧市): 立ち上げ3ヶ月でタウンワークの掲載数を突破。Indeed連携を駆使して確実に応募を獲得し、結果としてSEOでも上位を獲得。年間36万円(月3万円)の低価格で案件の掲載数を担保。
- Phase 2(愛知県全域〜東海): 小牧の成功事例を横展開し、1年後には東海エリアのトップドライバーメディアへ急成長。
- Phase 3(神奈川・生麦): 神奈川県鶴見区生麦の一軒家を借り、社員4人で共同生活しながら泥臭い訪問営業を展開。即座に求人数を網羅し、関東拠点を確立。
- Phase 4(関西〜全国展開): オンライン営業(ベルフェイス)や展示会出展を軸とし、全国展開を果たす。
当時はAIもオンライン商談も無かったので、神奈川の生麦に一軒家を借り、車2台を置いて社員4人で寝食を共にしながら泥臭く営業しまくりました。ニッチエリアで「これだ!」という成功パターンを掴み、小牧から西尾張、愛知、東海、神奈川の生麦、大阪……と陣取り合戦のように領地を拡大していきました。
3. コロナによる打撃と苦渋の決断。そしてM&Aへ
――順調に急成長を遂げていた中、2020年にコロナ禍が大きな打撃となります。
竹村 氏: ドライバーが運ぶ、日本の物流の約半分は工業製品です。トヨタや三菱などの工場が止まると、そもそも出荷するモノが無くなります。「掲載を止めてくれ」と会社の電話が鳴りやまず、わずか1〜2ヶ月で売上は5億円規模から2億円台へ半減しました。
半年で6,000万円の赤字。当時のメンバーにも負担をかけ、経営者として人生で最も苦しくしんどい経験でした。
――大変な経験でしたね。そこから最高益までV字回復させ、そこから上場企業のじげんへM&Aを決断された背景には何があったのでしょうか?
竹村 氏: 借入れを行い、半年後には物流の復活とともに最高益を取り戻しました。さらに「2024年問題(残業規制)」という追い風が吹き、どこの運送会社も採用へ踏み切らざるを得ない大チャンスが訪れたんです。
しかし、僕自身がコロナの激震によるトラウマで、思い切った先行投資に踏み込めなかった。「この千載一遇のチャンスでアクセルを踏めないオーナー経営者は失格だ」と痛感し、圧倒的な資本力を持つじげんグループへのM&Aを決断しました。
グループジョイン後は大規模なメディアリニューアルや採用投資を叩き込んでもらい、狙い通り売上は2倍以上に急成長しました。
なぜ再び0→1(ゼロイチ)へ挑むのか。新規事業はお金ではなく“意志と根性”
――大手グループ傘下で事業をスケールさせた後、2025年4月に再び『株式会社プロベル』を起業されました。安定やスケールではなく、なぜ再びゼロからの起業を選んだのでしょうか?
竹村 氏: M&Aを経験して強く確信したことがあります。それは事業の立ち上げ(0→1)は、お金があればできるものではないということです。
大手企業であっても新規事業の多くが失敗するように、立ち上げにおいて最も重要なのは意志と根性です。僕が一番楽しかった時期を思い返すと、2017年から2022年のドラピタで頭を絞ってアイデアを出し、何もない中でゼロイチを作っていた期間だったんですよね。
泥臭い根性でプロダクトをマーケットにフィットさせ、そこから先は資本の力で一気に伸ばす。ゼロから頭を絞るプロセスこそが自分の性に合っているし、これがビジネスマンとして僕が世の中に与えられる最大の価値だと思ったからです。
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プロベルの立ち上げとビジネスモデルの試行錯誤
――2025年4月にスタートした『プロベル』ですが、構想段階での葛藤や、立ち上げの背景について教えてください。
竹村 氏: 実は最初、求職者が自ら移籍金を提示して買いに来てもらう「人材オークション」のようなビジネスも検討していました。ただ、祝い金規制や人材事業法上のハードルがあり、裏で直接契約されてしまうリスク等を考慮して断念した経緯があります。
探っていく中で改めて業界を見渡した時に気がついた盲点が「世の中に人材サービスそのものを正しく比較・PRするプラットフォームが存在しない」ということでした。
求人代理店時代、保有台数20台の小さな運送会社に高額な大型媒体を売りつけるような営業が平気で横行していました。僕はマイナビ時代から「この条件の求人だったら絶対に他社媒体の方が効果が出ますよ」と他社の代理店を紹介したり、平気で他社サービスを紹介する営業スタイルでした。
竹村 氏: サラリーマンとしてあんまり良くないと思うんですけどね。一方でお客様からは信頼されたんです。表面上のスペック比較ではなく、「誠実で優秀な“人(担当者)”で外注先を選べる世界」を作ろうとプロベルに行き着きました。
15の大カテゴリーの下に中カテゴリー:76分野・小カテゴリー:225分野があり、目的・課題・得意業種/業態に合わせた軸でプロを検索することができる
――プロベル立ち上げ後、実際に運用してみて直面した想定外はありましたか?
竹村 氏: 「1商談いくら」というマッチングモデルは、事業構造として絶対に赤字になるという現実です。
ニーズのある顧客を1件獲得するのに約2万円。課題をヒアリングしてマッチングを組むまでに人件費を含めると5〜6万円がかかる。しかし1商談でいただける売上は約5万円。件数を増やせば増やすほど赤字が膨らむ構造だったんです。
さらに、「1商談いくら」の課金形態だとお客様側はニーズが完全に固まった案件しか嫌がる。営業力のある人間からすれば「ニーズをまとめるのが営業の仕事ではないか?」と思うところもあるのですが、単なる発注代行になってしまい本質的な価値が提供できなかった。1年やって「このモデルはダメだ」と気づきました。
――その赤字構造という想定外の壁を、どのように軌道修正されたのですか?
竹村 氏: キャッシュフローを担保する「前課金の掲載モデル」と「成果報酬型のマッチング」への完全シフトです。
ちょうどその時期、GoogleやAI検索(LLMO)のアルゴリズムが変化し、企業名や「業界×おすすめ」「比較」というワードでレビューサイトが上位表示される潮流が来ました。
プロベルでもこの流れを捉えて記事を制作したところ、サイトの評価が劇的に向上。現在では「研修会社 おすすめ」でGoogle検索1位、「RPO おすすめ」で6位(「RPO 東京 おすすめ」では1位)など、事業に直結する重要キーワードで圧倒的な強みを発揮しています。現在インデックスされている約100記事のうち、約30%が検索トップ10に入り、1位を獲得している記事も10〜15本にのぼります。
2026年10月執筆時現在 「研修会社 おすすめ」の検索結果
立ち上げ1年の手応え。3年で10,000記事を量産しSEO・AI検索を制覇する
――なぜ、そこまで質の高い記事を爆速で量産できるのでしょうか?
竹村 氏: 「4割AI × 6割人」のオペレーション体制を構築したからです。
100%AIに頼ってもSEOや検索の1位はなかなか取れません。企画と構成は人間が担当し、一次執筆をAIで行い、それを人間がガシガシ修正・編集する。さらに名ばかりの監修ではなく、各業界のエキスパートにしっかり監修に入ってもらう体制を作りました。
2026年9月末に一挙に350本を投入して合計500本規模にし、毎月100〜200記事、2年半〜3年後には10,000記事まで量産します。
受託ビジネス(モノがないサービス)の圧倒的な比較・レビューインフラを作り、「人」の経歴や想いを濃く露出する。不誠実な営業を淘汰し、真面目に成果を出すプロフェッショナルが正しく買われる世界を、根性で作り上げていきます。
ビジネスモデルの仮説に縛られるな。不確実な壁を打ち破るのは「強い意志」と「泥臭い根性」だ
新規事業において、最初に描いたマネタイズモデル(仮説)に固執することは最大のリスクである。竹村代表が示したのは、1商談課金というマッチングビジネスの構造的欠陥(赤字化)を1年で見抜き、前課金×成果報酬×メディアの量産へと即座にピボットするアジリティだった。
予期せぬ想定外の壁や構造的赤字に直面した時、事業を途中で投げ出さずに軌道修正し、正解へ導くことができたのは他でもない。「BtoB取引の不を正し、誠実な人が報われる世界を作る」という強い意志と、成果が出るまで頭を絞り泥臭く検証を回し続ける根性があったからだ。
- 自社の新規事業は、顧客獲得コスト(CPA)と提供価値の構造が破綻していないか?
- 想定外の苦境に直面した時、あきらめずに愚直に突破できる「意志と根性」を備えているか?
ゼロから頭を絞り、泥臭く検証を回す起業家の意思決定にこそ、ビジネスの停滞を打ち破る「生きた知恵」が宿っている。