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株式会社ゴーリスト
代表取締役
加藤 龍 氏
かとう・りょう/関西大学を中退後、人材系ベンチャー企業へ。新規事業や新卒採用に携わり、グループ会社代表として人材紹介事業を展開。その後IT・Web領域の新規プロジェクトを統括、技術系ベンチャーの経営コンサルを経て2011年、株式会社ゴーリストを創業。

INSIGHT SUMMARY

  • 好調の最中に引く決断:問い合わせが過去最高を更新していたタイミングでも、構造的に勝てない戦場だと見極めた瞬間に撤退する。目先の数字は継続の理由にならない。
  • 「7秒の決断」:「メンバーがやる気だし…」「キックオフで宣言した手前、ダサい」——見栄やプライドが頭をよぎった瞬間こそ、その判断が正しい証拠。嫌な方の選択肢が、常に正解である。
  • サンクコストと自己像の排除:過去の準備や「周りからどう見られるか」という自己像への執着が、傷口を広げる。守るべきプライドなど最初から無いという原点に立ち返る。

1. 問い合わせが過去最高の事業を、なぜ撤退させたのか

新規事業において、参入すること以上に難しいのが「撤退の決断」だ。加藤氏はこれまで、複数の事業を立ち上げてきた。その中には撤退した事業も存在する。

なかでも象徴的だったのが『SamurAI』だ。撤退を決めたのは、生成AIが急速に進化したタイミングだった。

加藤 氏:有料版のAIツールを1週間ほど使い込んでみて、「これはWeb単体のプロダクトで足掻いても、近い将来すべてAIに飲み込まれる」と直感しました。負け戦になると分かっているのにメンバーの時間を使わせるのは嫌だった。問い合わせが過去最高を更新していたタイミングでしたが、即座に撤退を決めました。

問い合わせが絶好調であっても、構造的に勝てない戦場だと判断した瞬間に手を引く。目先の数字が良いことは、事業を続ける理由にはならないのだ。

自然流入で問合せは月50件を超えていた

2. 「7秒の決断」——見栄やプライドが事業の傷口を広げる

事業を撤退できない経営者の多くは、投じた資金や時間(サンクコスト)、そして「言った手前やめられない」というプライドに縛られている。

加藤 氏:『SamurAI』の撤退を迷った時間は実質7秒くらいです。「メンバーがやる気だし…」とか「メンバーに宣言した手前、ダサいと思われるかな」とか考えている時の判断は、大体間違っている。自分の見栄やプライドが混ざった瞬間に、意思決定は歪むんです。

加藤氏は「自分は凡人であり、何の影響力もない存在だ」という原点に立ち返ることが重要だと強調する。

加藤 氏:自分に格好をつけてプライドを持つから、撤退できなくなる。「感情が邪魔しているな」と気づいた瞬間に、即座に嫌な方の選択肢である撤退を選ぶ。嫌な方の決断は正しい。それだけです。

3. 撤退が浮かせた時間と資源を、次の挑戦に集中させる

事業を引く決断は、終わりではなく次への仕込みだ。撤退によって生まれた時間と資金をどこに向けるか。それが加藤氏の事業哲学の核心につながっている。

外国籍の方の人材紹介事業はコロナ禍という外的環境が決定打になった。

加藤 氏:人の情熱が消えた時と、外的にどうしようもない変化があった時に撤退してきた。そうやって振り返ると、始まりも人で、終わりも人なんですよね。事業ファーストじゃない。人が事業を作るからです。

撤退によって浮いた時間と資源を次の挑戦に集中させることこそが、長期的勝利を引き寄せる経営者の責務である。

【新規事業における「継続」と「撤退」の判断軸比較】

評価軸 陥りがちな誤った判断 加藤氏の判断軸
意思決定の理由 サンクコスト(過去の投資金額・時間) 当事者の熱量・パッションの有無
好調な数字の扱い 直近の問い合わせ増を継続の根拠にする 構造的に勝てるかどうかで判断する
経営者の心理 見栄、世間体、周囲へのプライド プライドを捨て、直感の違和感を最優先
判断のスピード サンクコストの積み上がりで決断が遅れる 感情が混ざった瞬間に「嫌な方」を即選択

決断の背景にはゴーリスト社には「個と組織をGOALへ導くプロフェッショナルチーム」というミッションがある。言い換えると「どこに行っても活躍できる人になる」であり、人・組織に重みを置いたミッションを掲げている。

明日へのインサイト:見栄を捨て、直感の違和感から逃げるな

事業を引く時の最大の障害は、経営者自身の「見栄とプライド」である。構造的に勝てない環境に変化したというシグナルを感じ取ったなら、直近の数字がどれだけ好調であっても、過去の投資や世間体をすべて捨てて即座に撤退の舵を切らなければならない。撤退によって浮いた時間と資源を次の挑戦に集中させることこそが、長期的勝利を引き寄せる経営者の責務だ。

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