SamurAIのアイキャッチ

株式会社ゴーリスト
新規事業SamurAI PM T氏
カナダ在住。新規事業開発およびプロジェクトマネジメントの経験を持ち、SamurAIには海外市場開拓の担当として参画し、リリース前のプロダクト開発から、海外向けマーケティング、ユーザーリサーチ、開発ディレクションまでを一貫して担当。

※本記事は、実際の取材内容に基づき構成されていますが、取材企業のセキュリティおよび事業戦略上の観点から、企業名・お名前を一部仮名・属性表記にて掲載しております。

「SamurAI」とは、株式会社ゴーリストが展開するエンジニア採用向けのAIスキル評価サービスです。従来の履歴書やコーディングテストでは評価しづらかった、エンジニアの「問題解決のプロセス(計画力、デバッグ力、AI活用力など)」を、AIを用いて実務に近い形で評価することを目的としたプロダクトです。

INSIGHT SUMMARY

  • 「入口の数」は、事業成果の代理指標にはならない: 無料トライアルへの問い合わせは、前年の275件に対し、今年は半年間で332件と既に前年を超えていた。しかしそれは、実際の利用や事業成果につながらなかった。入口の指標が伸びているときほど、その先のファネルは見えにくくなる。
  • 価値を実感するまでの手順が多いプロダクトは、関心を利用に変換できない: SamurAIを試すには「企業がアカウントを作成する → 候補者を登録する → 候補者が実際に受検する」という手順が必要だった。興味を持ってもらえても、すぐに価値を体験できない構造そのものが、ファネルの断絶を生んでいた。
  • 検証の速度が、撤退判断の速度に間に合わなかった: ユーザーインタビューから改善の仮説は得られた。しかし施策を実行・検証する前に撤退が決まった。新規事業において「課題に気づくのが遅い」ことは、そのまま「打ち手を試す時間を失う」ことを意味する。

「コードの正誤」ではなく、「どう考えて解いたか」を評価する

事業責任者・T氏  ーーーー私がSamurAIに参画したのは、これまでの新規事業やプロジェクトマネジメントの経験に加えて、カナダ在住という環境や英語力を活かし、海外市場での可能性を探る役割としてでした

エンジニア採用には、履歴書や一般的なコーディングテストだけでは、候補者が実際にどのように考え、どう問題を解決するのかが見えにくいという課題があります。

SamurAIのスクショ SamurAIは、単にコードの正誤を見るのではなく、計画力やデバッグ力、AIツールを活用する力といった、実務に近いプロセスを評価しようとしています。さらに、その評価自体にAIを用いる点も含めて、競合と比べて今後優位に立てる要素が多いと感じ、このサービスで勝負したいと思ったのが参画の理由です。

リリース前の「まだ何もない」状態から関わる

参画した当時、SamurAIはまだサービスをリリースしていない段階でした。

事業責任者・T氏 ーーーー最初に取り組み始めたのは、どの機能がリリースに最低限必要なのかをチームで整理することです。そのうえでミニマムな機能を開発し、Webサイトや英語でのサービス説明、利用フローを整え、実際にサービスをリリースしました。

完成されたプロダクトを広めるのではなく、まだ形になりきっていない状態から、開発・リリース・マーケティング・その後の改善までの一連の流れを経験しました。チームでリリースした瞬間は、素直に嬉しかったのを覚えています。ようやくスタートラインに立てた、と思いました。

初期開発からマーケ、リサーチまで担った一気通貫の役割

新規事業では、マーケティング、事業開発、ユーザーリサーチ、プロダクト改善を明確に切り分けることが難しく、状況に応じて役割が変わっていきます。

T氏 が実際に担当していた領域

担当カテゴリ 具体的な業務内容

 

マーケティング・プロモーション
  • 海外市場や競合サービスの調査、英語圏をターゲットとした市場検討
  • 英語版Webサイトやサービス説明の改善
  • Product Huntを含むサービスローンチ
  • LinkedInやXなどのSNS運用
ユーザーリサーチ・分析
  • 無料トライアルユーザーの分析
  • Google AnalyticsやSearch Consoleを使った簡易分析
  • ユーザーアンケート・インタビューの設計と実施
  • インタビュー結果をもとにしたUI/UX改善案の整理
プロダクトマネジメント・事業計画
  • 社内のエンジニアや採用担当者へのヒアリング
  • 開発チームとの機能改善に関するコミュニケーションと開発ディレクション
  • 来期の数値計画立案

新規事業においては「事業に必要なことはなんでもやる」のが大事だとはよく言うが、まさにその通り。ユーザーに周知するところから、そのフィードバックをプロダクトへ反映するところまで、一貫して関わっていた。

入口は伸びた:北米市場向けのトーン変更で問い合わせが前年超えに

事業責任者・T氏 ーーーーリリース後、私の主な役割はマーケティングやビジネス周りでした。まずはSamurAIを知ってもらい、無料トライアルへの問い合わせを増やすことに取り組みました。

結果として、昨年1年間で275件だった問い合わせは、今年は6月までの半年間で332件に達し、わずか半年で前年の実績を上回りました。

広告を出したり、特別な有料サービスを利用したりしていたわけではありません。そのなかで一定の反応を得られたことから、サービスのテーマや発信内容そのものには関心を持ってもらえる可能性があると感じました。

なかでも効果を実感したのが、発信のトーンを変えたことだ。

事業責任者・T氏 ーーーー当初は、日本やアジアの企業にも受け入れられやすい、比較的真面目で説明的なコンテンツを発信していました。しかし、ターゲットとしていた北米市場を意識して、思い切って少しジョークを交えた親しみやすい内容へ変えたところ、それまでより反応が良くなりました。

そこからは、北米のユーザーに届きやすいトーンや見せ方へ、コンテンツの方向性を調整していきました。実際の反応を見ながら発信方法を変え、成果につながる方向性を見つけられたことは、マーケティング面でうまくいったことの一つだと思っています。

最も苦戦したのは「価値実感までのファネル」の壁

事業責任者・T氏 ーーーー入口を増やすという目標を達成したあと、私は開発を含めた事業全体を見るようになりました。そこで見えてきたのが、問い合わせ数は増えている一方で、実際のインタビューやアセスメントの実施には十分つながっていないという、ファネル上の課題でした。

無料トライアルへの問い合わせが増えたことは、そのまま事業成果につながったわけではなかったのです。原因の一つは、プロダクトの構造にありました。SamurAIを利用するには、次の手順が必要です。

  1. 企業側がAssignment(課題)を作成する
  2. 候補者を登録する
  3. 候補者が実際に受検する
  4. ここでようやく、企業が価値を実感できる

SamurAIの利用手順

事業責任者・T氏 ーーーー興味を持ってもらえても、すぐに試して価値を実感することが難しい構造になっていました。入口の人数を増やすことはできた。しかし、その関心を実際の利用へ転換するファネルを作ることには、最後まで苦戦しました。

突破口を探るなかで、撤退が決まった

課題の原因を探るため、SamurAIチームはインドの企業に協力してもらい、採用担当者とエンジニアの双方にユーザーインタビューを行った。


事業責任者・T氏 ーーーー実際の採用現場からは、さまざまなインサイトを得ることができました。ただし、それらはあくまで改善に向けた仮説の段階です。そこから施策を一つずつ試し、結果を見ながら検証していく必要がありました。

しかし、具体的な改善策を実行・検証する前に事業撤退が決まり、突破口を見つけるところまでは進めませんでした。

撤退を聞いたときに感じた、二つの気持ち

事業責任者・T氏 ーーーー撤退を聞いたときは、率直にとても残念でしたし、悔しかったです。

無料トライアル数は伸びており、ユーザーインタビューを通じて課題や改善の方向性のアイディアも少しずつ見え始めていました。もう少し時間をかけて検証を続けたかった、という思いがあります。

一方で、新規事業には、限られた時間やリソースのなかで成果を求められる難しさもある。。継続的な投資が必要となるなか、事業全体の状況を踏まえて区切りをつけることも、必要な経営判断の一つです。T氏 のなかには、二つの感情があったという。

事業責任者・T氏 ーーーープロジェクトの途中ではメンバーの入れ替わりもありましたが、それぞれのタイミングで携わってくださったエンジニアやデザイナーをはじめ、チームの皆さんにはとても感謝しています。試行錯誤を重ねながら、まだサービスが形になっていない段階からリリースまで進められたのは、それぞれの専門性や協力があったからこそだと思っています。

私自身も、マーケティングやビジネス周りだけでなく、開発やデザイン、ユーザー体験についてチームの皆さんと一緒に考える機会をいただきました。SamurAIを通じて得られた経験や学び、そしてチームの皆さんと取り組めた時間は、今後にもつながる大切な財産になったと感じています。

 明日へのインサイト

  • 入口(問い合わせ・トライアル)の数は伸ばせても、それが事業成果に直結するとは限らない
  • 価値を実感するまでの手順が多いプロダクトは、関心を利用へ転換できない。これはマーケティングではなく構造の課題である
  • 課題に気づくのが遅れると、打ち手を試す時間そのものが失われる

 

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