全国でコワーキング施設や地域拠点のコミュニティづくりを手がける株式会社ATOMicaの社内カンパニー「KOMMONSカンパニー」が、2026年10月19日、企業向けの組織づくり支援サービス「KOMMPAS(コンパス)」の提供を開始しました。組織開発を担うHR KOMMONS事業部を通じたサービスです。注目したいのは、その切り口です。社員一人ひとりを評価するのではなく、チームの「関係性」を診断の対象に据えています。

何が発表されたか:診断とワークショップをセットにした組織づくり支援

KOMMPASは、Webアンケートによる診断と、社員が参加するワークショップをセットで提供するサービスです。プレスリリースでは、サービスの骨子を次のように説明しています。

KOMMPASでは、社員一人ひとりを採点するのではなく、チームの状態を5つの観点で診断します。その結果をもとに、社員が参加するワークショップで会議や役割分担を見直し、一定期間後の再診断で変化を確かめるまで支援します。

支援の流れは「測る→変える→続ける」の3段階で整理されています。

測る:組織コミュニティ化診断

社員全員が回答するWebアンケートで、チームの状態を5つの観点から診断します。観点は「安心して発言や挑戦ができるか」「互いに信頼し、助け合えるか」「経験を振り返り、これからの方向を共有できているか」「学び合い、改善を重ねているか」「仕事の意味を感じ、誇りを持てるか」の5つです。安心と信頼を土台に、振り返りと学び合いを経て、仕事の意味や誇りへと至る順に並べられています。企業側は5観点で見た全体像と、管理職・一般社員ごとの傾向を把握でき、回答した社員は自分の働き方を振り返るためのタイプ診断の結果を受け取れます。

変える:傍楽(はたらく)ワーク

診断結果は配って終わりにせず、チームごとに全員が参加するワークショップ「傍楽(はたらく)ワーク」で共有します。取り組みの入口は「関係性」「生産性」「売上」の3つから、診断結果と会社の状況をふまえて選べます。決めた改善策は会議や朝礼、1on1など日々の仕事の中で試していきます。リリースでは、朝礼の最後に一人ずつ「困っていること」を一言話す、出た提案をまず最後まで聞くといった小さな変化が中心になると説明されています。

続ける:振り返りと再診断

振り返りで改善策の定着を支え、一定期間後に再び診断して変化を確かめたうえで、次に取り組む課題を選びます。

対象は「社員同士が連携し、それぞれが主体性を発揮できる職場をつくりたい企業」で、規模・地域は問わないとしています。

なぜその選択をしたのか:「個人の意欲」ではなく「関係性」を測る

課題の置き方を変えた

組織づくりの相談では、「社員が自ら提案できるようにしたい」「部門を越えて協力できるようにしたい」という声が多く寄せられるといいます。その原因として、社員一人ひとりの意識や意欲が挙がることもよくあると、同社は述べています。

ただ、KOMMONSカンパニーが支援の現場で見てきたのは、同じ社員でも職場によって動き方が変わる場面でした。プレスリリースはこう結論づけています。

社員が自ら動けるかどうかは、本人の意欲だけで決まるわけではありません。KOMMPASがまず診断によってチームの状態を知ることから始めるのは、そのためです。

個人の意欲を問題にすると、打ち手は研修や評価の見直しなど「個人に働きかける施策」に寄りがちです。一方で同社は、評価制度や目標管理のような仕組みも人と人の関係の上に成り立っており、信頼や協力関係が築けていない職場では制度を入れても十分に機能していない例があったと指摘しています。つまり、制度や個人よりも手前にある「関係性」を測る対象に選んだことが、KOMMPASの出発点になっていると読み解けます。個人を採点しない設計は、診断が「誰ができていないか」を探す道具になることを避ける意味も持っていると考えられます。

コミュニティ運営の知見を、社内に持ち込む

では、なぜ組織開発の専業企業ではなく、コミュニティ施設を運営してきたATOMicaがこの切り口を取れたのでしょうか。同社は企業・自治体・大学などと連携し、全国75以上の施設で人と人を結ぶコミュニティづくりを展開してきました。各拠点に専門職「コミュニティマネージャー」を配置し、企業オフィスに常駐して部署を越えた関係づくりを行う「コミュマネinオフィス」も複数の企業で導入されてきたといいます。

KOMMPASは、この知見を組織づくりの手法に落とし込んだものと位置づけられています。

会社には、組織図に表れる役割や指示系統とは別に、困ったときに頼り頼られる、人と人のつながりがあります。このつながりを会社の中のコミュニティと捉え、その状態を測る診断を「組織コミュニティ化診断」と名づけました。

社外の拠点で「人と人を結ぶ」ことを事業にしてきた企業が、その対象を企業の内側にも向けたという構図です。組織図とは別のつながりを可視化するという発想は、コミュニティを日常的に運営してきた同社だからこそ自然に出てきた視点と見ることができます。

HR事業部と業務支援の経験を組み合わせる

もう一つの土台が、KOMMONSカンパニー自体の事業です。同カンパニーはカスタマーサクセス領域で企業の業務を設計から実行まで担ってきました。加えて2025年8月には、Syinc株式会社から組織開発・採用支援の事業を譲り受けてHR KOMMONS事業部を立ち上げています。HR KOMMONS事業部は、採用戦略の設計や評価制度・等級制度の構築、1on1の定着支援、組織文化の言語化などを手がけています。

KOMMPASでは、関係の見直しに加えて仕事そのものの改善まで企業と一緒に進めるとしています。ワークショップの入口に「関係性」だけでなく「生産性」「売上」が並んでいるのは、この業務支援の経験が反映された結果と読めます。関係性の改善を「職場の雰囲気づくり」で終わらせず、役割分担や営業の進め方といった業務の成果につなげようとする設計です。コミュニティ運営の知見、HR領域の専門性、業務支援の実務という3つの手持ち資源を一つのサービスに束ねた点が、今回の参入判断の核心といえます。

今後については、導入企業での知見をもとに診断と支援内容を磨くとともに、「コミュマネinオフィス」との連携も視野に入れているとしています。

読者への示唆

組織課題を「個人の意欲」の問題として捉えるか、「関係性」の問題として捉えるかで、打ち手は大きく変わります。KOMMPASの判断から学べるのは、課題の置き方そのものを変えることで、既存の研修・評価サービスとは異なる立ち位置をつくれるという点です。また、診断を「測って終わり」にせず、ワークショップと再診断までを一続きの設計にしたことは、診断型サービス全般に通じる工夫といえます。自社が別の事業で培ってきた「人と人を結ぶ」ような知見が、どの顧客課題の解き方を変えうるか。新規事業の種を探す際の問いとして持ち帰ってみてはいかがでしょうか。

■株式会社ATOMicaについて

名称  :株式会社ATOMica
所在地 :宮崎県宮崎市橘通西3-10-32 宮崎ナナイロ東館8階(本社)
代表者 :代表取締役Co-CEO 嶋田 瑞生、南原 一輝
設立  :2019年4月5日
事業内容:コワーキングスペースの立ち上げ・企画・運営支援、産学協同プロジェクトの企画・運営、コミュニティを通じたDX/CX領域の人材育成とマッチングをはじめとするソーシャルコワーキング®事業
URL  :https://atomica.co.jp


株式会社ATOMica・2026年10月19日のプレスリリースより引用