何が発表されたか

SCSK株式会社は2026年10月14日、ノーコード開発基盤「CELF」の新機能として「AI開発エージェント(仮称)」を発表しました。アプリの設計から実装、テスト、保守までの開発工程を、チャット形式でAIに指示するだけで進められるというのが骨子です。Anthropicの「Claude Code」を活用し、自然言語で伝えた要件から画面・テーブル・業務ロジックをAIが組み立てます。

提供はまずβ版から始まります。2026年10月23日にβ版の提供を開始し、CELFを利用中、または導入を検討している企業を対象に先着30社を募集します。募集期間は2026年10月14日から11月20日まで。費用はβ版自体は無償ですが、基盤となるClaude Codeの利用料は別途必要になるとしています。参加企業には約1ヶ月間の利用環境に加え、導入説明会や技術サポートも提供される予定です。

SCSKによれば、α版での検証では、4つのパートナー企業による主要画面1画面あたりの実装生産性が、従来比で300〜800%に向上したといいます。

CELFに精通していない担当者でも、開発ノウハウを踏まえたAIの支援により、効率的にアプリ開発を行うことが可能になります

なぜ「AIに丸投げ」ではなく「可視化」にもこだわったのか

今回の設計で注目したいのは、SCSKが単に「チャットで指示すれば動くアプリができる」という利便性だけを追求したわけではない点です。プレスリリースでは、AIが生成したロジックを隠さず、ビジュアルプログラミングの形で可視化し、ブラックボックス化を防ぐ設計にしたと説明されています。

ノーコード・ローコード領域でAIによる自動生成を導入する際、最大の懸念の一つは「できあがったものの中身が分からない」という状態に陥ることです。生成された業務ロジックが見えないままシステムが動き続ければ、後任の担当者への引き継ぎや、仕様変更時の修正が難しくなります。CELFがもともと「ノーコードでロジックを可視化しながら組み立てる」ことを特徴としてきたプラットフォームである以上、AIによる自動化を取り入れる際にも、その可視性を手放さないという判断は自然な流れといえます。言い換えれば、今回の選択は「開発速度を上げること」と「現場が理解・保守できる状態を保つこと」を両立させるための設計判断だったと読み解けます。

この判断の背景には、CELFを取り巻く需要の変化もあるようです。SCSKの調査では、CELFを利用する企業のうち、標準機能では対応しきれない業務領域が「82.6%」にのぼるという結果が出ています。また、ERP周辺業務にCELFを使う案件の割合は、前年度の約3.4倍に拡大しているとのことです。つまり、CELFに求められる開発対象は、定型的な簡易アプリから、より複雑でERPに近い業務ロジックを扱う領域へと広がりつつあります。複雑な業務ロジックを扱う場面が増えるほど、「AIが何を作ったか分からない」状態のリスクは大きくなるため、可視化への投資は今回の需要変化に対応するための選択だったとも解釈できます。

段階的に検証してから広げるという進め方

もう一つの意思決定として目を引くのは、いきなり全ユーザーに新機能を公開するのではなく、α版での検証を経て、先着30社限定のβ版という段階を踏んでいる点です。AIエージェントによるアプリ開発支援は、生成結果の品質や、既存のCELF環境との相性を見極める必要がある新しい取り組みです。実運用に近い規模の企業に限定して使ってもらい、技術サポートを伴走させながらフィードバックを得るというやり方は、新機能のリスクを抑えつつ効果を確かめる、堅実な進め方だと言えます。

SCSKは今後の展望として、2027年春に市民開発者向けサービスの提供を予定しているとしています。業務部門の担当者自身が、身近な業務のアプリ化を手がけられる体制を見据えているとのことで、今回のAI開発エージェントは、その足がかりとなる取り組みのひとつと位置づけられそうです。

読者への示唆

新規事業や社内のDX推進に関わる読者にとって、今回の事例が示すのは、生成AIを業務システム開発に組み込む際に「速度」と「可視性」のどちらを優先するかという問いです。AIによる自動生成は開発スピードを大きく引き上げる一方、ブラックボックス化が進めば、後から中身を把握・修正できないシステムを量産するリスクも抱えます。SCSKの今回の選択は、既存プラットフォームが持っていた可視化の強みを手放さずにAIを組み込む、一つの参考例になるのではないでしょうか。

■SCSK株式会社について

名称  :SCSK株式会社(SCSK Corporation)
所在地 :東京都江東区豊洲三丁目2番20号(本社)
代表者 :代表取締役 執行役員 社長 當麻 隆昭
設立  :1969年10月25日
事業内容:システム開発・運用、ITインフラ構築・保守、ネットワークソリューション、クラウドサービス等の提供(ITサービス事業)
URL  :https://www.scsk.jp/


SCSK株式会社・2026年10月14日のプレスリリースより引用