生成AIの登場で、コードを書く速度そのものは大きく変わりました。しかし、開発の現場で本当に負荷が増しているのは、品質保証やセキュリティ確認、そして事業成果に結びつくアウトプットの質の担保だと感じている担当者も多いのではないでしょうか。システム開発会社の株式会社Saiteki(東京都渋谷区、代表取締役CEO:戸塚直道)は2026年10月14日、QA・品質向上支援「Saiteki Quality」、セキュリティ支援「Saiteki Security」、Web・ホームページ制作「Saiteki HP」の3サービスを提供開始したと発表しました。
いずれも単発の受託開発ではなく、独立したサービスとして切り出した点に、同社の組織設計上の判断が表れています。
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自社のAI駆動開発の実践知を、外部提供価値に転換
Saitekiは「IT業界の多重下請け構造を解体し、新しいSIerを誕生させる」というビジョンのもと、SES事業・AI駆動型SI事業・M&A事業を展開してきた企業です。今回のリリースによれば、同社は社内勉強会やAI開発ツールの導入、ナレッジ共有を通じて、自社の開発現場でAI駆動開発の標準化を進めてきたといいます。
自社の開発現場でAIを活用し、生産性の向上と、その過程で生じる品質・セキュリティ上の課題の双方に向き合っているからこそ、AI時代の開発現場に必要な支援を提供できると考えています。
この一文は、同社が3サービスを単なる新規事業の追加としてではなく、「自社がすでに直面している課題への対処法を、顧客にも提供する」という位置づけで立ち上げたことを示しています。組織規模についても言及があり、2026年4月時点で約20名だった組織は、入社予定者を含む社員85名と、業務委託・フリーランス等のパートナー15名を合わせた100名体制になったとのことです。急速な拡大の過程で、自社のAI駆動開発をどう標準化し、外部にどう還元するかという問いに直面してきたことがうかがえます。
なぜ「3つの独立サービス」に切り分けたのか
今回の発表で注目したいのは、QA・セキュリティ・Web制作という性質の異なる3つの機能を、あえて別々のサービスとして立ち上げた点です。プレスリリースでは、その背景として次のように説明されています。
今後の開発現場では、単にAIを導入するだけでなく、次のような課題に対応する必要があります。
・AIを活用して生成したコードの品質を、どのように担保するか
・開発速度が上がるなかで、テスト工程をボトルネックにしないために何が必要か
・脆弱性や意図しない実装を、開発工程のどの段階で検知するか
・人が判断すべき要件・品質・セキュリティの基準を、どのように定めるか
・リリース後の検証と改善を、どのように継続するか
AIによって開発速度が上がるほど、品質・セキュリティ・顧客接点(Web制作はその代表例)それぞれで求められる専門性が増していく、という認識が根底にあります。これらを一つの「AI開発支援」としてまとめず、QA・セキュリティ・Web制作という独立したサービスラインに分けたのは、課題ごとに必要な体制・提供プロセスが異なるためだと考えられます。QAは要件定義からリリース後の運用改善までの継続的な品質管理、セキュリティは診断から再診断までの反復的なプロセス、Web制作は顧客理解からデザイン・運用までを一貫して担う必要があり、それぞれ異なる専門性と提供形態を要します。単発の受託開発の延長として1つのサービスに混在させるより、顧客が課題に応じて必要なサービスだけを選べる形にする方が、提供側・顧客側双方にとって実務的だという判断があったとみられます。
QA・品質向上支援「Saiteki Quality」
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要件・仕様の整理からテスト、リリース、運用改善まで、開発ライフサイクル全体の品質向上を支援するサービスです。プレスリリースでは、AIによって実装速度が向上するほど、開発の最後にテストを実施するだけでなく、要件や仕様の段階から品質基準を定め、開発と並行して品質をつくり込むことが重要になると説明されています。QA体制・品質基準の設計、テスト計画・設計・実行、テスト自動化の検討・導入、不具合や品質課題の分析、リリース後の品質改善、開発プロセス全体の改善を支援するとしています。
セキュリティ支援「Saiteki Security」
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脆弱性やセキュリティリスクの発見から、対応優先度の整理、修正、再診断、継続的な運用改善までを支援するサービスです。Webアプリケーション等の脆弱性診断、検出されたリスクの影響度・緊急度の整理、対応優先順位の提案、修正に向けた技術支援、修正後の再診断、セキュリティ基準と運用体制の継続的な見直しを行うとされています。なお、同社によれば「Saiteki Security」が現時点で主に対象とするのは、AIシステム固有のセキュリティ診断ではなく、AI活用によって開発やリリースが高速化するなかで、通常のWebシステムやサービスに必要となる継続的なセキュリティ対策とのことです。診断を一度実施して終えるのではなく、開発と運用のなかにセキュリティ対策を組み込むことを目指すとしています。
Web・ホームページ制作「Saiteki HP」
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企業やサービスが持つ魅力を整理し、事業成果につながるWebサイトを制作・運用するサービスです。企業・サービス・顧客に関する情報整理、Webサイトの目的・ターゲットの設定、サイト構成および導線設計、デザイン・開発、公開後の更新・運用、問い合わせ・採用・認知向上に向けた継続改善を一貫して支援するとしています。AIの活用により構成案やデザイン、実装、コンテンツ制作の速度は高められる一方、誰に何を伝え、どのような行動につなげるかという判断は人が担う必要があるという考え方が、サービス設計の軸になっています。
代表コメントに見る、組織としての狙い
代表取締役CEOの戸塚直道氏は、今回のサービス立ち上げの背景について次のようにコメントしています。
自分たちがAI駆動開発に取り組むからこそ、その過程で生じる品質・セキュリティ上の課題も理解できます。今回の3サービスを通じて、AI時代の開発を、速さだけでなく品質と安全性の両面から支えていきます。
AIに任せられる作業を増やし、エンジニアが顧客の課題理解・要件整理・設計・品質判断に使える時間を増やすこと。その発想自体は目新しいものではありません。しかし、Saitekiのケースが示唆的なのは、急拡大する自社組織でAI駆動開発を標準化する過程そのものを、外部提供価値の源泉として位置づけている点です。「自社でうまくいった取り組みを外販する」という流れは珍しくありませんが、品質・セキュリティ・Web制作という性質の異なる課題を、あえて切り分けたサービス体系として設計し直したところに、単なるノウハウの横展開にとどまらない組織設計上の判断が見て取れます。
読者への示唆
生成AIの活用が進むほど、開発速度の向上と、品質・セキュリティの担保という2つの要請は、同時に強まっていきます。新規事業や新サービスの立ち上げを担う読者にとっても、「AIで何を速くするか」だけでなく、「速くなった分、どこで人による確認・判断を担保するか」を事業構造・組織設計のレベルで設計し直す必要があるという点は、業種を問わず参考になる視点ではないでしょうか。Saitekiの事例は、自社の実践課題を外部提供サービスとして再設計する際に、機能をひとまとめにせず、課題ごとに必要な体制・提供プロセスを見極めて切り分けるという判断の一例と言えます。
■株式会社Saitekiについて
名称 :株式会社Saiteki
所在地 :東京都渋谷区桜丘町
代表者 :代表取締役CEO 戸塚直道
設立 :2024年5月15日
事業内容:SES事業、AI駆動型SI事業、M&A事業
URL :https://saitekiinc.com/
株式会社Saiteki・2026年10月14日のプレスリリースより引用