山下 有人 氏
やました・ゆうと/株式会社ミライル 採用コンサルティング部 部長。事業責任者として新規事業を立ち上げ、2026年6月新規プロダクト「HRaris」をリリースする。
早瀬 仁洋 氏
はやせ・よしひろ/株式会社ミライル 取締役。「HRaris」プロジェクトのアドバイザーを務める。
藤原 武琉
ふじわら・たける/株式会社HumAInで「HRaris」プロジェクトで現在PM(プロジェクトマネージャー)を務める。
新規事業の立ち上げは、不確実なロードマップと答えなき選択の連続だ。 どれほど精緻な開発計画を立てようとも、現場の最前線では「仕様の大幅変更」「直前のブランド名変更」といった想定外の事態が突如として牙をむく。
2026年6月にリリースされたHRテックプラットフォーム『HRaris(ホラリス)』。その最大の目玉機能であるAIコンシェルジュ「星乃ありす」は、実は当初の要件定義書には一切存在しない機能であった。
堅実な事業計画を覆すポジティブな「想定外」に対し、いかにして開発スケジュールと要件定義をコントロールし、リリースへと導いたのか。ミライル取締役の早瀬仁洋氏、事業責任者の山下有人氏、そしてHumAInのPMである藤原武琉が、現場推進の裏側にある「アジャイルな要件定義のインサイト」を紐解く。
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HRaris(ホラリス)とは、株式会社ミライルが提供する初期費用・月額費用0円で使える(※基本プラン)採用データを「見える化」し、AI採用コンシェルジュとの対話支援を通じて、データ×AIの力で採用課題を解決する採用支援プラットフォームです。2026年6月16日にサービス提供開始。前身は「採用見える化クラウド」および「採用コンシェルジュ」
💡 INSIGHT SUMMARY
- 労働集約からの脱却が生んだAI化: 人力コンサルタントの工数限界という壁(想定外)に直面したことで、単なるQ&Aボットではない「対話型AIコンシェルジュ」の着想が生まれた(ミライル事業責任者 山下有人氏)。
- 効率性ではなく「感情への寄り添い」をAIに再現: 最短距離で答えを出すAIではなく、顧客の漠然とした悩みを引き出す「寄り添い型AI」の選択が、プロダクトの独自性(コアバリュー)を決定づけた(ミライル取締役 早瀬仁洋氏)。
- 直前の仕様変更を乗り越える要件定義力: 開発終盤におけるブランド名変更やキャラクター実装に対し、ベンダーと密に連携しウィジェット化等でアジャイルに対応した(HumAIn PM 藤原武琉)。
1. 労働集約の壁と「アナログ対話」の限界——AIコンシェルジュ「星乃ありす」誕生の裏側
菊池 健生(HumAIn):
前身プロダクトから進化を遂げた『HRaris(ホラリス)』ですが、その最大のコア機能であるAIコンシェルジュ「星乃ありす」は、どのような課題意識から生まれたのでしょうか?
山下 有人 氏(ミライル事業責任者):
前身の「採用見える化クラウド」で分かったのは、データを可視化するだけではお客様は課題解決まで動けないということでした。そこで「採用コンシェルジュ」として、お客様の課題に応じた処方箋を人間が個別に提示する業務を始めました。
しかし、これをすべて人力で行うと、お客様が増えるほどコンサルタントの工数が肥大化し、派遣事業と同じ労働集約型になってしまう。この限界を突破するためにAI化を模索し始めました。
菊池 健生(HumAIn):
しかし当初、社内ではAI化に対する強い懸念や反対意見もあったと聞いています。
早瀬 仁洋 氏(ミライル取締役):
ええ、私は最初、明確に反対していました。採用の悩み解決には、泥臭いアナログな対話や感情への寄り添いが不可欠だからです。「効率化のためにAIで処理するなんてナンセンスだ、コンサルタントが全件手厚く出向くべきだ」と思っていました。
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「最初はAI化に反対だった。だが、提示されたAIのデモを見た時ハッとした。 効率的に答えを出すのではなく、じっくり話を聞き、寄り添いながら選択肢を提示する。これなら『熟練コンサルタントの対話』を再現できると確信した」
(株式会社ミライル 取締役 早瀬 仁洋 氏)
山下 有人 氏(ミライル事業責任者):
現場の工数限界と、早瀬が提示する「寄り添い価値」の狭間で葛藤していた時、パートナーから「対話を通じて潜在ニーズを引き出すAIモデル」の提案を受けたんです。
単にQ&Aを返す自動応答ではなく、採用担当者の漠然とした相談を壁打ちの中で深掘りし、3つの処方箋を提示してくれる。この体験価値を見た瞬間、「これなら人間以上の伴走ができる」とチーム全体の確信に変わりました。
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AIコンシェルジュ星乃ありすとの対話体験。
2. 課題の因数分解:従来のQ&Aボットと『HRaris』AIコンシェルジュの決定的な違い
新規事業においてAIを導入する際、多くの企業が「Q&Aの自動化」「コスト削減」という短絡的な効率化に陥りがちだ。しかし『HRaris』チームは、AIを「効率化ツール」ではなく「熟練コンサルタントの代行(相棒)」として再定義した。
開発現場と経営陣が導き出した「AI実装の推進軸」を因数分解すると、一般的なQ&Aボットとの間に明確な構造の違いが浮かび上がる。
従来のQ&Aボットと『HRaris』AIコンシェルジュの対比
| 評価軸 | 一般的なQ&Aボット(効率化型) | 『HRaris』星乃ありす(ソリューション型) |
|---|---|---|
| 主目的 | 問い合わせ対応の自動化・コスト削減 | 潜在的な採用課題の引き出しと「処方箋」の提示 |
| 対話アプローチ | 最短距離で決まった答えを提示する | ユーザーの悩みに寄り添い、聞き直しながら対話する |
| データ連携 | 単一のQ&Aデータベース | 求人データ×市場相場×自社ノウハウの複合データ |
| 役割定義 | 検索エンジンの代替ツール | 現場担当者に寄り添う「熟練コンサルタント(相棒)」 |
※上記で示される「効率化ではなく、対話体験と潜在ニーズの言語化にAIを活用する設計」こそが、不確実な時代において『STUDIO INSIGHT』が提示するプロダクト推進のインサイトである。
3. 仮説検証プロセス:開発終盤の「2大想定外」——名称変更とビジュアル実装を突破したアジャイル要件定義
菊池 健生(HumAIn):
開発の最前線を預かる藤原さんにお聞きします。リリースまでのプロセスにおいて、PMとして直面した最大の「想定外」は何だったのでしょうか?
藤原 武琉(HumAIn PM):
開発も終盤に差し掛かった12月・1月頃に起きた「2つの計画変更」ですね(笑)。
1つ目は、元々『採用見える化モール』という名称で進んでおり、サーバーやシステム内部の変数名もその前提で組んでいた中で、急遽『HRaris(ホラリス)』へとブランド名が変更されたこと。
2つ目は、当初テキストベースのチャットボットだった要件に対し、「ビジュアル(見た目)」と「音声(声)」を持つアバターキャラクター(星乃ありす)を実装することが急遽決まったことです。
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「12月・1月の直前で『キャラと声を乗せる』と決まった時は、正気かと思いました(笑)。 ですが、ベンダー側がウィジェット形式で組み込みやすい設計にしてくれたことで、開発遅延を起こさずに実装し切ることができました」 (株式会社HumAIn PM 藤原 武琉)
山下 有人 氏(ミライル事業責任者):
藤原くんには本当に無茶振りをしました(笑)。ですが、北極星(道標)を意味する「ポラリス」と、ミライル・HumAIn・パートナー・顧客が「韻を踏む(HRaris ✕ 星乃ありす)」というストーリーが固まった時、どうしてもこの世界観でリリースしたかった。
藤原 武琉(HumAIn PM):
最初は「ブラウザ上で音声とアニメーションを出してパフォーマンスは落ちないか?」と冷や冷やしました。ですが、外部エンジン側(エボルブ社)が非常に軽量な実装仕様を提示してくれたことで、当初の想定よりも遥かに少ない開発負荷で着地させることができた。
現場の急なアイデアに対しても、ベンダーを巻き込んで「どうすれば最小負荷で実現できるか」をアジャイルに調整し続けたことが、リリース成功の鍵でした。
『HRaris』要件定義における想定外と突破の軌跡
| フェーズ | 当初の計画・要件 | 直面した「想定外の変更」 | 現場での突破策(次の一手) |
|---|---|---|---|
| 仕様定義期 | テキスト入力ベースの標準的なチャットボット | 人力コンサルタントの代替にならず、体験価値が不足 | 潜在ニーズを引き出す「対話型シナリオエンジン」へ再設計 |
| 開発終盤(12月) | 『採用見える化モール』としてのシステム構築 | ブランド名が『HRaris』へ突如変更 | 影響範囲を精査し、サーバー・コード層の命名規約を緊急刷新 |
| リリース直前(1月) | テキストUIのみの画面設計 | 「見た目と声」を持つ「星乃ありす」の急遽実装決定 | 外部エンジンをウィジェット連携させ、本体開発への影響を最小化 |
4. 明日へのインサイト:未完成を恐れず、プロダクトを変化させ続ける覚悟
菊池 健生(HumAIn):
波乱の要件定義を経て無事にリリースを迎えた今、現場の責任者としてどのような手応えを感じていますか?
山下 有人 氏(ミライル事業責任者):
率直に言えば、まだまだ未完成でスタートラインに立ったばかりです。ですが、それこそが新規事業の面白さだと感じています。
「星乃ありす」という相棒を得たことで、これまでアプローチできなかった「潜在的な採用課題を抱える企業」との接点が圧倒的に増えました。AIは作って終わりではなく、現場の対話データを吸い上げながら育っていく「生き物」です。
最初から100点満点の計画書に固執するのではなく、途中で発生する「想定外の変更」を愉しみ、アジャイルに仕様を進化させていくこと。その柔軟な要件定義と現場の巻き込み力こそが、不確実なプロダクト開発を前進させる唯一の推進力になると信じています。
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