伊藤ハム米久ホールディングス株式会社(東京都目黒区、代表取締役社長:浦田寛之)は2026年9月14日、畜産副生物を活用した新規事業を開始すると発表しました。畜産副生物とは、食肉を生産する過程で得られる内臓などの部位を指します。従来、食肉加工業では主産物である精肉が事業の中心に据えられ、内臓等の副生物は食用原料や油脂、肥料といった形での活用にとどまることが多い領域でした。同社グループはこの副生物に対して、単なる廃棄・低利用資源の処理としてではなく、新たな価値を持つ食品素材として事業化するという選択をしました。第一弾商品として、豚肝臓由来の「肝臓エキス」を配合した「お酒の後の〆ゼリー」を、グループ会社の伊藤ハム株式会社(兵庫県西宮市、代表取締役社長:伊藤功一)から2026年9月15日に発売します。

何が発表されたか

発表によれば、伊藤ハム米久ホールディングスグループは食肉・加工食品事業を通じて畜産資源を余すことなく活かす商品づくりに取り組んできたほか、食品廃棄物の肥料化や廃食油の再利用といった資源循環にも取り組んできました。今回の新規事業は、この畜産資源の有効活用と資源循環の取り組みをさらに発展させたものと位置づけられています。

同社は次のように説明しています。

今回の新規事業は、畜産資源の有効活用と資源循環の取り組みをさらに発展させたもので、長年にわたり当社グループの中央研究所で培ってきた研究成果を活かし、畜産副生物由来の食品素材を活用した商品を展開します。

第一弾商品の「お酒の後の〆ゼリー」は、常温保存が可能な1本20gのスティックタイプで、飲酒後の新しい食シーンとして「〆」を提案するブルーベリー風味のゼリーです。豚肝臓由来の「肝臓エキス」を200mg配合するほか、「デンタブロック乳酸菌®」も配合しています。発売地区は伊藤ハム米久公式通販ショップほか一部販売先で、価格はオープン価格です。

なぜ自社で新規事業化に踏み切り、第一弾を消費財に据えたのか

この発表を読み解くうえで注目したいのは、畜産副生物という既存の事業資産に対して、あらためて「新規事業」という枠組みを与えた点です。同社グループの中央研究所は1980年代から畜産副生物由来素材の研究を進めており、1998年には豚肝臓素材を活用した商品化にもすでに挑戦していたといいます。つまり素材そのものの研究蓄積は長年存在していたにもかかわらず、それを事業として本格的に立ち上げるタイミングを今回選んだことになります。

背景として発表文が挙げているのは、畜産副生物が「さまざまな成分を含む素材も多く、食品分野における新たな価値創出が期待されている」という点です。長年蓄積してきた研究知見をもとに、豚肝臓を酵素によって低分子化し、食品に配合しやすくした「肝臓エキス」に着目したとしています。研究成果を消費者向けの具体的な商品として社会実装するという判断は、素材研究を事業として持続させるうえで、市場からの反応を得る機会をつくる意味を持ちます。

もう一つの論点は、第一弾商品を大がかりな新素材の単独販売ではなく、「お酒の後の〆ゼリー」という生活シーンに根ざした消費財に据えたことです。発表では、飲酒スタイルの多様化を背景に、お酒を楽しんだ後の新たな選択肢として〆ゼリーを提案するとしています。

飲酒スタイルの多様化を背景に、お酒を楽しんだ後の新たな選択肢として、「〆ゼリー」を提案。飲んだ後のお口なおしにも適した、食べやすいブルーベリー風味のスティックタイプの商品です。

研究成果である「肝臓エキス」という機能素材を主役にするのではなく、既存の生活習慣(お酒を飲んだ後に何かを食べたくなる、口直しをしたくなる)に接続した商品設計にしたことで、消費者にとっての導入ハードルを下げる狙いがうかがえます。あわせて、常温保存・1本20gのスティックタイプという携帯性を重視した仕様も、日常に取り入れやすくするための設計判断といえます。

同社グループはこの新規事業全体に「次のカタチへ。」というコンセプトを掲げており、次のように説明しています。

当社グループは、畜産物の恵みを大切に活かし、豊かな暮らしと未来につながる価値を創造していく「次のカタチへ。」をコンセプトに掲げています。本事業は、畜産副生物を新たな食品素材や商品へと転換し、持続可能な価値創造につなげる取り組みです。

食肉加工という主産物を扱う本業に対して、これまで周辺的な扱いだった副生物領域に独立したコンセプトとブランドページを与えたことは、単発の新商品発売ではなく、継続的な事業領域として育てる意思を示すものと読み取れます。

読者への示唆

今回の発表は、自社が長年抱えていた「主産物ではない資産(副生物・研究蓄積)」を、消費者接点のある商品という形で改めて事業化するという意思決定の一例です。新規事業を検討する際、必ずしも外部の新しい技術や市場を探しにいくだけでなく、社内に長年蓄積されてきた研究成果や、事業構造上主役になりにくかった資源に立ち返り、それを生活者にとって分かりやすい形(今回であれば「お酒の後の〆」という具体的な食シーン)に翻訳できるかどうかが、事業化の可否を左右する論点になり得ます。また、大きな技術的優位性をどこまで前面に出すか、それとも生活習慣への自然な接続を優先するかという商品設計上の選択も、今回のケースから読み取れる示唆の一つです。

なお、本記事はプレスリリースの内容に基づく解説であり、商品の効果効能や販売実績について、発表内容を超えて断定するものではありません。

■伊藤ハム米久ホールディングス株式会社について

名称  :伊藤ハム米久ホールディングス株式会社
所在地 :東京都目黒区三田1丁目6番21号 アルト伊藤ビル
代表者 :浦田寛之
設立  :2016年04月
資本金 :300億円
上場  :東証プライム
事業内容:製造業(食肉・加工食品事業)
URL  :https://www.itoham-yonekyu-holdings.com/index.html


伊藤ハム米久ホールディングス株式会社・2026年9月14日のプレスリリースより引用