INSIGHT SUMMARY

  • 平日毎日1本のニュース、週1〜2本のPickup。このペースをAIエージェントで支えている: 編集者を増やすのではなく、記事生産の大部分をAIエージェントに任せる選択をした。ニュース記事はほぼAIが書き、Pickup記事も執筆の土台はAIが担っている。
  • 人間が握っている確認は、一つではない: ネタの選定、書き上がった記事の文体、実際に投稿する内容——この3点は必ず人の目を通してから公開している。細かいニュアンスや設定のズレは、まだ機械的なチェックだけでは拾いきれない。
  • 失敗も含めて、そのまま公開する価値がある: 自動化の過程では、投稿の重複や予約日時の勘違いも実際に起きた。隠さず記録し、仕組みを直してきた。その泥臭い記録こそが、AI活用を検討する読者にとっての判断材料になると考えている。

STUDIO INSIGHTには、国内のプレスリリースを題材にした「ニュース」と、実在の意思決定を掘り下げる「Pickup」という二つの記事枠があります。ニュースは平日毎日1本、Pickupは週1〜2本のペースで公開しています。

結論から言うと、ニュース記事はほぼAIエージェントが書いています。Pickup記事も執筆の土台はAIが担いますが、取材で得た一次情報や自社の実践知を人間が加えている点が異なります。

この記事では、なぜ記事生産をAIエージェントに任せる選択をしたのか、どこを人間が握っているのか、そして自動化の過程で実際に起きた失敗まで、意思決定の中身をそのまま公開します。

なぜ「編集者を増やす」ではなく「AIに任せる」を選んだのか

ニュース記事は平日毎日1本、Pickup記事は週1〜2本。件数だけ見れば、決して無理なペースには見えないかもしれません。ですが、ニュース記事は「鮮度のあるうちに出し続ける」ことが前提です。プレスリリースの解説は、1週間前のネタを今さら出しても読者にとっての価値が薄れます。ネタ探し・裏取り・執筆・入稿というサイクルを、毎日確実に回し続ける必要があります。

ここで選択肢は二つありました。一つは、編集者・ライターを増やして人力で回す。もう一つは、生産ラインの設計自体を変えて、AIエージェントに実務の大部分を担わせる。

私たちが後者を選んだ理由は、単純にコストが安いからではありません。むしろ最初は、AIに任せた分だけ「思っていたのと違う」出来上がりを直す手間が発生し、トークン(AIの処理コスト)も想定以上にかかりました。それでも自動化を選んだのは、人を増やすやり方では、日によって確認の粒度がぶれやすいという感触があったからです。AIエージェントであれば、裏取りの手順・引用の作法・文体のルールを毎回同じ精度で徹底できます。「速いが雑」ではなく、「速くても手順は省略しない」を実現する手段として、AIエージェントによる自動化を選びました。

「丸投げ」ではない。人間が握っている確認は一つではない

自動化と聞くと、「全部AIに任せて、人間は何もしないのか」と思われるかもしれません。実際にはそうではありません。

STUDIO INSIGHTの記事生産は、大きく3段階に分かれています。

① ネタ収集 — AIエージェントが候補を洗い出し、「なぜその選択をしたのか」という意思決定の問いが立つネタに絞り込みます。ここで、どのネタを実際に記事にするかは、必ず人間が確認して選びます。
② 記事生成 — 選ばれたネタについて、出典の裏取り・執筆までをAIエージェントが担います。書き上がった記事は、文体やトーンが媒体の「らしさ」から外れていないか、細かいニュアンスの表現まで、人間が目視で確認します。
③ 投稿 — 機械的なチェックを通過したものを、AIエージェントがWordPressへ投稿します。実際に何が公開されるか、投稿内容そのものも人間が最終確認します。

つまり、人間が握っている確認は一つではありません。ネタの選定・記事の文体・投稿内容、この3点は、AIに委ねず必ず人の目を通しています。

なぜこの3点を人間に残しているのか。ネタ選びは編集方針そのものであり、AIに委ねると媒体としての一貫性が失われるリスクが最も高い工程だからです。文体や投稿内容は、機械的なチェックでは拾いきれない「らしさ」やニュアンスのズレが出やすい部分で、ここを人間が見ることが品質を担保する最後の砦になっています。AIに任せる範囲を広げるほど、逆にこの最終確認の解像度を上げる必要がある、というのが実感です。

【実践知】自動化の中で実際に起きた失敗

ここからは、実際に運用する中で起きたことを、隠さずに書きます。きれいに整った仕組みの説明だけでは、読者にとって参考にならないと考えているからです。

画像が抜け落ちていた話

最初の頃は、AIエージェントに「アイキャッチ画像を1枚取得する」とだけ指示していました。すると、プレスリリース本文中に他にも説明用の画像があっても、それらは拾われずに抜け落ちてしまうことがありました。読者から見ると、文章で説明している内容に対応する画像が、本文のどこにも無いという状態です。

さらに悪いことに、別の問題も重なりました。画像をアップロードすると、記事の中にある「ここに画像が入ります」という仮の目印を、実際の画像のアドレスに書き換える処理が動きます。ところが、この書き換えた結果が記事のファイルには保存されない仕組みになっていました。そのため、あとから本文中の別の画像を追加でアップロードする作業をすると、まだ書き換えられていない古い状態のファイルを読み込んでしまい、すでに正しく表示されていたはずのアイキャッチまで巻き込んで、複数の記事でまとめて画像が表示されなくなってしまったことがあります。

原因は二つありました。一つは、AIエージェントへの指示(プロンプト)が「代表的な1枚だけ取得すればよい」という前提のままだったこと。もう一つは、システム側の処理結果が記事ファイルへ保存されず、実行のたびに揮発していたことです。人間が指示文そのものを見直し、「本文中に出てくる画像は、通り道で見つけた時点でその場ですべて保存する。後から探しに戻らない」という明確なルールに書き換えました。あわせて、システム側もアップロード結果を必ずファイルへ書き戻すよう修正しました。

予約日時を勘違いしたまま投稿してしまった話

もう一つ、「明日の10時に予約投稿して」という指示を受けたとき、AIエージェント側が「今日」の認識を1日誤ったまま予約を組んでしまい、記事が本来の予定より1日遅れて公開される設定になっていたことがありました。人間の確認で気づき、投稿済みの日時を予約のまま修正して事なきを得ましたが、日付という基本情報でもズレは起こり得ることを痛感した出来事でした。

それでも自動化を続ける理由

これらの失敗は、人間だけで運用していても起こり得るミスです。実際、私たちも「もう少し確認を厳しくすればよかった」という反省をその都度重ねてきました。違うのは、AIエージェントによる自動化では、同じ失敗の再発防止策を、次回以降のすべての作業に即座に組み込めるということです。画像の抜け漏れが分かった後は、以後のすべての記事作成で「本文中の画像はその場ですべて保持する」というルールが徹底されました。人間の運用でも学習は起きますが、その学習をチーム全員に一律に、即座に反映させるのは簡単ではありません。

AIに向いている工程・人間が持つべき工程

自動化を1ヶ月以上続けてきた実感として、向き不向きには一定の傾向があります。

【AIに向いている工程】

  • 手順が明文化できる作業(裏取りのチェックリスト、引用のルール、文体のルール)
  • 反復回数が多く、疲労や慣れによる品質低下が起きやすい作業
  • 「今回はうまくいったか」を毎回同じ基準で機械的に確認できる作業

 

【人間が持つべき工程】

  • どのネタを扱い、どのネタを扱わないかという編集方針そのものの判断
  • 書き上がった記事の文体・ニュアンスが、媒体の「らしさ」から外れていないかの確認
  • 実際に投稿する内容が、意図した通りに仕上がっているかの最終確認
  • ルールと現実がずれたときに、ルールを変えるかどうかの判断(今回のケースでは、著作権法上の引用要件を満たすため、記事のスタイル自体を「ほぼ転載」から「引用+解説」へ改めたこともあります)

この線引きに共通しているのは、「基準さえ決まっていれば、その基準通りに実行し続けること」はAIの方が得意で、「その基準自体が正しいかどうかを決めること」「基準通りに仕上がっているかを見極めること」は人間の役割として残しておく、という考え方です。

自社の業務に置き換えるなら

この仕組みは、記事生産に限った話ではないと考えています。応用できる条件は、次の3つに整理できます。

① 「型」に落とし込める判断が、業務のどこかにあるか
すべてを型にする必要はありません。実際、私たちも「ネタ選定」「文体確認」「投稿内容確認」は型にせず人間の判断として残しています。逆に言えば、型にできる部分を正確に見極められれば、そこから任せられます。

② 失敗したときに、原因を特定して即座に直せる体制があるか
自動化は「失敗しない仕組み」ではなく、「失敗した後の学習が速い仕組み」です。失敗を検知して、ルールに反映する運用がセットでなければ、自動化はただの放置になります。

③ 任せた結果を、定期的に人間が確認する習慣があるか
私たちも、バッチごとに代表1本を必ず目視で確認しています。全件を確認する必要はありませんが、確認をゼロにした瞬間に、品質の劣化に誰も気づけなくなります。

まとめ

STUDIO INSIGHTの記事は、ニュースもPickupも、書く土台はほぼAIエージェントが担っています。それでも人間が最後まで手放していないのは、どのネタを扱うか、書き上がった記事の文体、そして実際に投稿する内容という3つの確認です。

自動化を「全部か、ゼロか」で考える必要はありません。型にできる工程を見極め、失敗を隠さず学習に変える運用とセットにすれば、任せられる範囲は思っている以上に広いというのが、私たちの実感です。

整理した設計を「自社独自の業務」で品質を落とさずにどう稼働させるか。AIエージェントの具体的な構築や現場適応の壁打ちから、株式会社HumAInが伴走いたします。