地方の老舗企業や中小企業を取材していると、よく聞く言葉があります。「うちの技術は悪くないはずなのに、なぜか知られていない」。技術や商品そのものの価値は変わっていないのに、それを外に伝える機能だけが、いつの間にか社内から失われている——そんな状態です。
PRコンサルティングを手がける株式会社MICHIYUQ(東京都新宿区、代表取締役:丸山悠未)は2026年10月7日、Web制作・ECサイト構築を手がけるイーシーバイウーズ株式会社(広島県広島市、代表取締役:曽我部真哉、以下「UUUTH」)と連携し、地方企業向けの新サービス「KOTO PR」の提供を開始すると発表しました。ブランドを整える「NOREN」と、価値を広める「HANABI」の2メニューで構成される、いわば企業の中に「広報室」そのものを立ち上げる支援です。
今回の発表を読み解くと、「なぜ単発の制作受託ではなく、広報機能を内製化する支援を選んだのか」という意思決定が見えてきます。
何が発表されたか——「モノ」ではなく「コト」を掘り起こす
KOTO PRは、製品のスペックや価格といった「モノ」の情報だけでなく、それを誰が、どんな理由で、どうつくっているのかという「コト」を掘り起こし、社外に届く形に整えるサービスです。MICHIYUQは、サービス名に込めた考え方についてこう説明しています。
KOTO PRは、製品のスペックや価格といった「モノ」の情報だけでなく、それを誰が、どんな理由で、どうつくっているのかという「コト」を掘り起こし、社外に届く形に整えます。外部に発注して終わりにせず、企業の中に広報の機能そのものを立ち上げることを目指すため、「デジタル広報室」という考え方を掲げています。
ここで注目したいのは、「外部に発注して終わりにしない」という一文です。プレスリリース1本、Webサイト1本を作って納品すれば完結する受託型の制作支援とは、設計思想が異なります。KOTO PRが提供するのは、ブランドを整える「NOREN」(担当:UUUTH)と、価値を世の中に広める「HANABI」(担当:MICHIYUQ)という2つのメニューで、いずれも「納品して終わりではない」ことが共通しています。発信テーマの見つけ方から発信内容のつくり方、メディアとの関わり方まで現場で伴走しながらレクチャーし、社内に継続的に広報できる力を育てる設計になっています。
なぜ「広報の内製化支援」という選択をしたのか
この意思決定の背景には、地方の中小企業が直面している構造変化があります。MICHIYUQはプレスリリースの中で、提供の背景を3つの観点から説明しています。
1つ目は、事業承継の形態変化です。後継者不足は改善しつつあるものの、その内実は「親族への引き継ぎ」から「社内からの昇格」へと移っています。アトツギの88%が39歳以下で経営を引き継いでいるとされ、若い世代や生え抜き社員が舵取りを担う時代に入っているといいます。
2つ目は、人手不足の深刻化です。2025年度の「人手不足」倒産は442件(前年度比43.0%増)と過去最多を記録したと紹介されており、求職者に自社の姿勢や仕事の価値が正しく伝わらなければ、採用でも選ばれない時代になっているという認識が示されています。
3つ目が、この2つの変化が重なって生まれる課題です。経営を引き継いだ新任経営者は「強みをうまく説明できない」「ロゴやWebサイトが時代の変化に合っていない」「発信方法がわからない」といった壁に直面しやすい、とMICHIYUQは指摘します。長年社内で当たり前になっている技術や仕事の進め方は、当事者だけでは価値として捉え直しにくいためです。
つまりKOTO PRが解こうとしているのは、「広報コンテンツが足りない」という表面的な課題ではなく、「事業承継のタイミングで、広報という機能そのものが会社から抜け落ちやすい」という構造的な課題です。制作物を1回納品するだけでは、次に経営者が代替わりしたときに同じ問題が再発します。だからこそMICHIYUQは、ブランドを整える「見た目」の支援(NOREN)と、価値を言語化して届ける「発信」の支援(HANABI)を一体で提供しつつ、どちらも社内に広報体制そのものを残すことを目指す設計を選んだと読み解けます。
代表取締役の丸山悠未氏は、このサービスに込めた思いを次のように語っています。
中小企業のPRを支援していて実感するのは、どんな会社にも誇るべき「コト(ストーリーや強み)」があるということです。ただ、それを「しっかり言葉にする(言語化)」ことと、「いまのデジタル時代に合わせた形に発信をアップデートする」という部分で止まってしまっているケースが多くあります。
自社の中に眠る本当の価値を掘り起こし、言語化からデジタルの仕組みづくりまで一貫して届ける。新世代の経営者やアトツギの挑戦に寄り添い、会社の未来をつくる発信体制をともに築いていきたいと考えています。
もう一つの意思決定は、提携先の選び方です。MICHIYUQはPRの言語化・戦略設計を得意とする一方、UUUTHはWebサイト・ECサイトの構築とデザインに強みを持ちます。「伝える中身をつくる役割」と「届ける器をつくる役割」を別会社の分業のまま切り離すのではなく、一つのチームとして企業に伴走する体制を組んだ点も、広報を一時的な制作物ではなく継続的な機能として根づかせるという狙いと整合しています。イーシーバイウーズ代表の曽我部真哉氏も、次のように述べています。
地方には、中身は素晴らしいのに見え方が何十年も前の状態のまま、という会社も少なくありません。ただ、すべてを新しくすればいいわけではありません。残すべきものを見極めたうえで整えることが大事です。MICHIYUQと組むことで、伝える中身と届ける器を同時につくれます。
読者への示唆
KOTO PRが対象とするのは、地域に根ざした中小企業を中心に、事業承継を控える企業や会社を受け継いだ「アトツギ」経営者、自社のブランドや情報発信を見直したい企業など幅広い層です。この事例から、新規事業・新サービスの担当者が持ち帰れる論点は2つあります。
1つは、「情報発信が弱い」という課題を解決する手段を考えるとき、コンテンツ単体の改善ではなく、「誰がそれを継続的に担うのか」という体制面まで含めて設計できているかという視点です。KOTO PRが「伴走」と「社内育成」を繰り返し強調しているのは、属人化していた広報機能を会社の仕組みとして残すことを重視しているためだと読み取れます。
もう1つは、事業承継や経営交代といった「会社の節目」を、新サービスの導入タイミングとして捉える視点です。経営者が代わるタイミングは、従来のやり方を見直す動機づけが最も働きやすい局面でもあります。KOTO PRのように、課題が顕在化しやすい節目に合わせてサービスを設計・提供することは、新規事業の立ち上げ方としても参考になる着眼点です。
■株式会社MICHIYUQについて
名称 :株式会社MICHIYUQ
所在地 :東京都新宿区新宿2丁目5番12号 FORECAST新宿AVENUE6階
代表者 :丸山悠未
設立 :2024年4月16日
事業内容:PR・マーケティングコミュニケーション事業、教育事業(「ミチユク広報ゼミ」の運営)、ブランド事業(カジュアルジュエリーブランドのEC)
URL :https://michiyuq.co.jp
■イーシーバイウーズ株式会社(UUUTH)について
名称 :イーシーバイウーズ株式会社
所在地 :広島県広島市中区大手町1-7-21 THE CUBE OTEMACHI 309
代表者 :曽我部真哉
事業内容:Webサイト制作、ECサイト構築、デザイン、システム開発
URL :https://uuuth.co.jp
株式会社MICHIYUQ・2026年10月7日のプレスリリースより引用