子ども向けスポーツスクールの運営や部活動地域展開支援を手がけるリーフラス株式会社(東京都渋谷区、代表取締役CEO:伊藤清隆)が、損害保険代理店事業への新規参入を発表しました。スポーツの「指導・運営」を担ってきた企業が、なぜ保険という異なる業種に踏み出すのか。その背景には、事業拡大の現場で実際に起きている課題があります。
何が発表されたか
リーフラスは、部活動支援やスクール運営という既存事業の枠を超えて、損害保険代理店事業に参入します。発表によれば、同社は代理店登録および募集人資格の取得を進め、自治体・学校等への保険サービス提供体制を構築する方針です。
同社はスポーツスクール事業や部活動地域展開支援を全国で展開しており、約7万人のスクール会員という会員基盤を持っています。今回の参入は、この事業基盤の上に「保険」という新しい機能を積み増す形で進められます。
当社は、全国で展開する部活動支援や約7万人のスクール会員という事業基盤を活かし、これまで提供してきたスポーツの「指導・運営」に「保険」という新たな安心を加え、スポーツに関わる安全・安心をより包括的に支援する体制を構築します。
将来的な展開としては、部活動生やスクール会員を対象とした独自保険の検討も挙げられています。傷害総合保険を想定し、24時間対応の補償プランやWeb完結の加入手続き、会員の家族まで対象を広げるサービスなどが検討課題として示されました。ただし、これらはあくまで「検討」段階であり、具体的な商品設計や提供時期は今回の発表では明らかにされていません。
なぜその選択をしたのか
今回の参入の起点になっているのは、リーフラス自身が展開する「部活動の地域展開」という事業が全国で広がっている、という事実です。学校の部活動を地域のスポーツクラブや民間事業者が受託・運営する動きが各地で進む中、リーフラスも自治体や地域スポーツクラブから部活動運営を受託する機会が増えているとしています。
受託が増えるということは、活動中の事故やケガに備える保険についての説明や加入相談、加入手続きに関するニーズも、自治体・学校・保護者側から同時に増えるということです。プレスリリースはこの点を、参入理由の中心に据えています。
部活動の地域展開が進む中、当社が自治体や地域スポーツクラブから部活動運営を受託する機会も拡大しています。それに伴い、自治体・学校・保護者から、活動中の事故やケガに備える保険についての説明や加入相談、加入手続きに関するニーズも増加しています。
ここで注目したいのは、保険の説明や加入の推奨・勧誘、他社商品との比較説明、申込書の受領といった行為は、保険募集人の届出がなければ行えないという法令上の制約です。つまり、部活動の運営現場で保険に関する相談を受ける機会が増えても、資格を持たない担当者がその場で対応することは本来できません。リーフラスが代理店登録と募集人資格の取得に踏み込んだのは、現場で実際に生じている相談ニーズと、それに適法に応えられる体制との間にあったギャップを埋めるための選択と読み取れます。
新規事業の入り口としては、まったく畑違いの業種に飛び込むよりも、自社が日常的に接している顧客接点の中に既にあるニーズを拾い上げる方が、参入のハードルは相対的に低くなります。リーフラスの場合、そのニーズの受け皿が保険という規制業種だったため、資格取得という手続きを踏む必要があった、という構図です。事業内容そのものを転換するのではなく、既存の事業基盤に隣接する機能を足していく増築型の意思決定だと言えます。
もう一つの軸は、約7万人という会員基盤の存在です。プレスリリースでは、この会員基盤とスポーツ現場で培ったノウハウを組み合わせ、将来的に独自保険の提供を検討するとしています。地域ソリューション支援事業部長の西梶博紀氏のコメントでは、次のように述べられています。
今回の損害保険代理店事業への参入は、単に保険を取り扱うことが目的ではありません。当社が全国のスポーツ現場で培ってきたノウハウと顧客基盤を活かし、これまでの『指導・運営』に『保険』という新たな価値を加えることで、スポーツに関わる安全・安心をより包括的に支えていく取り組みです。
このコメントからは、保険事業を単なる新規収益源としてではなく、既存事業の付加価値を高める手段として位置づけていることがうかがえます。会員基盤を保険という新しいサービスの提供先として活用する発想は、既存の顧客接点を軸に事業領域を広げていく企業に共通する意思決定のパターンの一つです。
読者への示唆
今回の発表で示されている情報の範囲では、独自保険の具体的な商品設計や、代理店事業単体でどの程度の収益を見込んでいるかは明らかにされていません。あくまで「検討」「方針」の段階の発表であり、今後の実施状況は同社の続報を待つ必要があります。
新規事業開発の観点で参考になるのは、参入の意思決定が「自社の外側にある成長市場を狙う」形ではなく、「自社の内側で既に発生している顧客ニーズに、規制対応というハードルを越えて応える」形で行われている点です。既存事業の受託範囲が拡大するにつれて、周辺領域での相談・対応ニーズが自然に発生することは珍しくありません。そのニーズが自社の資格・体制では対応できない法令上の壁にぶつかったとき、資格取得や代理店登録によってその壁を越えるのか、それとも外部の専門事業者と提携する形で対応するのか——この選択の分かれ目に、新規事業の芽が潜んでいる場合があります。今回のリーフラスの参入は、その分かれ目で「自ら資格を取得し内製化する」道を選んだ事例として読むことができます。
■リーフラス株式会社について
名称 :リーフラス株式会社(LEIFRAS CO.,LTD.)
所在地 :東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー20階
代表者 :代表取締役CEO 伊藤清隆
設立 :2001年8月28日
事業内容:スポーツスクール事業 イベント事業 アライアンス事業 部活動支援事業 地域共動事業 ヘルスケア事業 放課後等デイサービス事業
URL :https://www.leifras.co.jp/
リーフラス株式会社・2026年9月10日のプレスリリースより引用