株式会社電通総研(本社:東京都港区、代表取締役社長:岩本浩久)は2026年9月11日、企業のデータ分析環境の構築から導入後の継続運用までを支援するソリューション「Dsemantrix AI(ディーセマントリックス エーアイ)」の提供を開始したと発表しました。生成AIによるデータ分析の導入自体は多くの企業で進んでいる一方、実務環境に展開した途端に精度が落ち、運用が定着しないという壁に対して、人手の調整ではなくLLMによる自律的な改善の仕組みで応えようとしている点が今回の発表の核心です。
何が発表されたか
電通総研が示す課題認識は明確です。PoC(概念実証)の段階では期待通りの結果が出ていても、多様なデータが交錯する実業務環境に展開すると精度が低下し、定着しないケースが少なくないといいます。プレスリリースはその原因について、次のように説明しています。
その主な原因は、AI自体の性能不足ではなく、業務定義の不一致や文章化されていない暗黙知、データ品質のばらつきなど活用するデータに要因がある場合が多いのが現状です。
つまり、AIモデルそのものの精度を追いかけるのではなく、AIに読み込ませる側のデータや業務知識の整備不足に問題の所在を見ているわけです。この認識に立ち、「Dsemantrix AI」は、利用層・運用層・分析層・メタデータ管理層・データ層という5つのレイヤーで機能を明確に分離した構造的アーキテクチャを採用しています。各レイヤーを分離することで、データやAI技術、利用環境が変化しても、必要な機能だけを柔軟に改善・拡張できるようにする設計です。
その上でもう一段特徴的なのが、AIの回答精度が落ちた場合の対応プロセスです。プレスリリースでは次のように説明されています。
AIの回答精度が落ちた場合、システムがモニタリングを通じてログを解析し、原因分析からデータカタログ・セマンティックモデルの修正案立案までを自律的に実行します。人は最終承認のみを行うため、運用の負担を大幅に軽減します。
原因分析から修正案の立案までをシステム側が担い、人は最終承認だけを行うという役割分担です。加えて、電通総研が培ってきたデータ品質管理ソリューション「Dqualitex」のノウハウを組み込み、データの作成からAIが参照するまでの全工程で品質を自動的に監視・検証する仕組みも備えています。特定のクラウドサービスに依存せず、企業が既に導入済みのDWH・レイクハウス環境をそのまま生かして段階的に導入・拡張できる点も、乗り換えコストを避けたい既存ユーザー企業への配慮といえそうです。
なぜ「人手のチューニング」ではなく「自律的改善ループ」を選んだのか
生成AIを使ったデータ分析基盤は、この数年で数多くのベンダーが提供してきました。多くの場合、精度が落ちたときの対応は、AIエンジニアがプロンプトを見直したり、データの前処理を手作業で補正したりする形に落ち着きがちです。しかしこの方式は、担当者のスキルや稼働時間に運用の持続性が依存してしまうという弱点を抱えています。PoCでは特定の担当者が張り付いて精度を維持できても、本番運用が長期化・拡大するにつれて、同じ体制を維持し続けるのは難しくなります。
電通総研が選んだのは、この「人による都度対応」を仕組みの外に置き換える方向性です。ログ解析による原因分析、データカタログやセマンティックモデルの修正案立案までをシステムに担わせ、人の関与を最終承認という一点に絞り込む設計は、運用コストを構造的に下げると同時に、属人化のリスクを減らす狙いがあると読み取れます。加えて、5層アーキテクチャによって機能を分離しているのは、AIモデルや利用環境が今後も変わり続けることを前提に、特定の技術トレンドに全体設計を作り替える必要が生じないようにするための備えとも解釈できます。マルチプラットフォーム対応も含め、既存の投資を活かしながら「壊れにくい仕組み」を志向している点が、今回の設計思想の一貫した軸になっています。
読者への示唆
生成AIを使ったデータ活用の検討では、どうしても「どのモデルを使うか」「どこまで精度が出るか」という技術選定に関心が向きがちです。しかし今回のリリースが示しているのは、精度低下の主因がモデル側ではなく、業務定義・暗黙知・データ品質といった土台側にあるケースが多いという指摘です。自社でPoCが本番運用に定着しない事態に直面している場合、モデルを変える前に、運用時の精度低下をどう検知し、誰が・どのように修正するのかという「維持の設計」ができているかを見直す価値がありそうです。
■株式会社電通総研について
名称 :株式会社電通総研
所在地 :東京都港区港南2-17-1
代表者 :代表取締役社長 岩本 浩久
設立 :1975年12月
事業内容:システムインテグレーション、コンサルティング、シンクタンク機能の提供
URL :https://www.dentsusoken.com
株式会社電通総研・2026年9月11日のプレスリリースより引用