何が発表されたか

SCSK株式会社は2026年9月17日、AIを活用したサイバーセキュリティサービスを通じて、高度化するサイバー攻撃への対応を包括的に支援する「顧客伴走型統合セキュリティサービス」の提供を開始すると発表しました。対象として想定しているのは、いわゆる「フロンティアAI」の進展によってもたらされる新しい脅威です。プレスリリースでは、この言葉を次のように定義しています。

※現在世界で最も高度な能力を持ち、一般的なAIの性能を凌駕する最高水準のAIモデル群の総称(Ex. Mythos)

今回のサービスの特徴は、単一の製品やソリューションを売り切る形ではなく、SCSKがこれまで強みとしてきた現場力に、新たにケイパビリティとして獲得したSOCサービスおよびネットワークセキュリティサービスを組み合わせ、アプリケーションからインフラまでを一体的にカバーする点にあります。

サービスを構成する5つのカテゴリ

提供されるサービスは、顧客の課題に応じて次の5つのカテゴリに分類され、状況に合わせて組み合わせて提供される設計になっています。

①応急対応

セキュリティパッチ適用のベストプラクティス提供に加え、全社的な適用計画や推進体制の構築を支援します。顧客環境に常駐する「分室」から計画策定・適用作業までを伴走することで、脆弱性への迅速な対応を目指します。

②状態可視化

CMDB・SBOM・ASM・脆弱性情報を統合した情報基盤を構築し、IT資産やソフトウェア部品、脆弱性の状況を一元的に可視化します。資産の重要度と脅威情報を組み合わせたリスクベースの優先度判断も支援対象に含まれます。

③即時修復

クラウドネイティブ技術や自動化基盤を活用し、脆弱性発見後の迅速な修復を実現するとしています。セキュリティパッチの即時適用を前提とした運用プロセスとシステムアーキテクチャの整備も支援します。

④対応・防御の高度化

ゼロトラストを中核としたマイクロセグメンテーションを推進し、侵害を前提としたセキュリティアーキテクチャの実現を図ります。あわせて、AIを活用した脅威検知・分析・対応を行う「AI-SOC」の提供も掲げています。

⑤ガバナンス強化

フロンティアAI対策の全体構想や優先順位、ロードマップの策定から進捗管理までを支援します。ポリシー整備や教育・訓練を通じて、経営層から現場までを一体としたセキュリティガバナンスの継続的な強化を目指すとしています。

なぜ単発の製品提供ではなく「伴走型」を選んだのか

ここで注目したいのは、SCSKが今回、個別のセキュリティ製品を並べて提供するのではなく、あえて「伴走型」という継続支援の形態を選んでいる点です。この選択の背景には、フロンティアAI時代のリスクの性質に関する、ある一つの見立てがあります。

プレスリリースの「背景」欄では、フロンティアAIの進化によって脆弱性の発見や攻撃コードの生成、攻撃シナリオの作成が急速に高度化していると説明されています。従来は発見が困難だった脆弱性が短期間で大量に見つかる可能性や、脆弱性の発見から攻撃実行までの期間が大幅に短縮される懸念が指摘されており、高度な技術を持たない攻撃者であっても、フロンティアAIの悪用によって高度な攻撃を実行できる可能性が高まっているといいます。金融庁が金融機関に対策強化を要請する動きも、この文脈で紹介されています。

一方で、SCSKグループの強みを説明する箇所では、次のような一次情報が引用されています。

英国AISIの報告書によれば、現時点ではフロンティアAIは、十分に防御されたITシステムに対しては、攻撃を達成できるとは言えないと報告されています。

この2つの情報を重ねると、今回の意思決定の論理が見えてきます。攻撃側の能力が急速に底上げされている一方で、守る側の基本的なセキュリティ対策が十分であれば、フロンティアAIといえどもすぐには突破できない、という整理です。つまり課題は「未知の高度な脅威に単発の新製品で対抗すること」ではなく、「基本的なセキュリティ対策を迅速かつ着実に、継続的に実行し続けられる組織能力をどう獲得するか」という、実行力・体制の問題に置き換わります。

これは、製品を1回販売して終わる形態とは相性が悪い課題です。計画策定から実装・運用までをワンストップで支援し、短期的な応急対応と中長期的な態勢強化を両立させる「伴走型」の枠組みは、この組織能力構築という課題に対応するための選択だと解説できます。SCSKグループがシステム開発・運用やネットワークの分野で培ってきた実行力に、セキュリティ領域の専門性を掛け合わせて一体提供する狙いも、単なる商材ラインアップの拡充ではなく、顧客組織の中に「継続して対応し続ける力」を作り込むことに主眼があると読み取れます。

今後の展開と読者への示唆

SCSKは今後の展望として、外部パートナーと共同開発するマルチモーダルなソブリン対応サービスや、脆弱性診断・ペネトレーションテストの内製化支援、CMDB・SBOM・脆弱性情報を統合した情報基盤、AIを活用した次世代SOCの開発を進めるとしています。あわせて、システム開発・運用・ネットワーク領域の人材に対するセキュリティスキルの体系的な強化も掲げており、単発のサービスメニュー拡充ではなく、組織としての対応力を継続的に底上げしていく方向性がうかがえます。

新規事業や事業運営に関わる読者にとって、この事例が示唆するのは「新しい脅威やリスクへの対応を検討する際、単発の対策ツール導入で片づけようとしていないか」という問いです。フロンティアAIのように急速に変化する脅威環境では、一度きりの対策よりも、計画・実装・運用を継続的に回し続けられる体制をどう社内外で確保するかが、意思決定の核心になり得ます。今回のSCSKの選択は、自社の既存の強みと新たに獲得したケイパビリティを組み合わせて「伴走」という提供形態に落とし込んだ一例として、参考になるのではないでしょうか。

■SCSK株式会社について

名称  :SCSK株式会社(SCSK Corporation)
所在地 :東京都江東区豊洲三丁目2番20号(本社)
代表者 :代表取締役 執行役員 社長 當麻 隆昭
設立  :1969年10月25日
事業内容:システム開発・運用、ITインフラ構築・保守、ネットワークソリューション、セキュリティサービス等の提供(ITサービス事業)
URL  :https://www.scsk.jp/


SCSK株式会社・2026年9月17日のプレスリリースより引用