株式会社AI Orchestra(本社:東京都豊島区、代表取締役:宮地俊充)は2026年9月24日、教材やノウハウをもとに専用のAIチャットを作成し、受講生やチームへ共有できるサービス「AIチャットつくーる」を一般公開しました。プログラミングやAPIキーの発行を必要とせず、無料プランから利用できる点が特徴です。

この発表の背景にあるのは、OpenAIが案内しているカスタムGPT(GPTs)の提供終了です。講座やコミュニティでカスタムGPTを使ってきた講師・運営者にとって、代替手段をいつ、どこまで用意するかは避けて通れない判断でした。今回のリリースからは、その判断の中身が見えてきます。

何が発表されたか

AIチャットつくーるは、講師や講座運営者が自分の知識や考え方をもとに「分身AI」を作り、受講生やチームに共有できるサービスです。AIの名前・話し方・役割を設定したうえで、回答のもとになる資料(ナレッジ)を登録します。対応形式はテキストを含むPDF、Word(DOCX)、TXT、Markdownで、1つのAIにつき最大20ファイルまで登録できるとされています。

作成したAIは共有リンクで届ける仕組みで、受講生側は会員登録のうえでAIを追加すれば、共有されたAIの利用自体に有料契約は必要ありません。プレスリリースでは、この共有・管理の仕組みを次のように説明しています。

講師・講座運営者は、AIの名前・話し方・役割を決め、教材やFAQを登録し、共有リンクを届けます。受講生は本サービスに会員登録し、共有されたAIを自分のAIに追加して会話できます。共有AIの利用だけであれば、受講生側の有料契約は不要です。

料金は、無料の「フリー」(作成できるAIは1個まで)に加え、月額3,300円(税込)の「Pro」(3個まで)、月額11,000円(税込)の「Max」(10個まで)、月額33,000円(税込)の「Ultra」(30個まで)という4段階が用意されています。全プランでリンク共有に対応し、有料プランでは毎月の利用枠のうち未利用分を翌契約期間まで(次期プラン1か月分を上限に)繰り越せるとのことです。一般公開は2026年9月24日(木)午前9時としています。

なぜこのタイミング・この設計で出したのか

今回の意思決定の起点は、OpenAIによるカスタムGPTの提供終了案内です。プレスリリースは、OpenAIの公式FAQを引用する形で次のように説明しています。

OpenAIの公式FAQには「カスタム GPT は、2026年12月11日に提供終了予定です。」と記載されています。既存のGPTは提供終了まで利用でき、公式の移行先としてプラグインが案内されています。

編集部でもOpenAIの該当FAQページへのアクセスを試みましたが、アクセス制限により直接の内容確認はできませんでした。この提供終了時期および移行案内の内容は、あくまで株式会社AI Orchestra側がプレスリリース内で引用・要約したものである点に留意してください。同社は、移行してもアカウントの共有設定や既存利用者のアクセス権が自動で引き継がれるとは限らないとも説明しており、講座でAIを配布している運営者にとっては「教材や指示文の移行」だけでなく「誰が、どのように使い続けるか」まで見直す必要が生じる、としています。

ここで注目したいのは、AI Orchestraが自社サービスを「OpenAIの公式な移行先」とは位置づけていない点です。プレスリリースには次の記載があります。

本サービスは株式会社AI Orchestraが独自に提供するもので、OpenAIの公式移行サービスではありません。GPTs(カスタムGPT)の全機能・設定・会話履歴の自動移行や、同一の回答を保証するものではありません。

つまり同社が選んだのは、「カスタムGPTをそっくり移行する」ことではなく、「講師・講座運営者が抱えていた共有・会員管理・利用枠管理といった周辺機能を、あらためて自社の仕組みとして組み直して提供する」という設計です。API接続や会員認証、データ保管をサービス側で用意し、作成者はAPIキーの発行やチャットシステムの構築をしなくてよい形にしたのは、GPTs利用者の多くが非エンジニアの講師層であることを踏まえた判断だと考えられます。あわせて、AIの利用量を作成者配下の全AI・全利用者で共有し、上限に達すると会話を停止する仕組みを設けているのも、想定外の高額請求を避けたい運営者側の不安に応える設計と言えそうです。

公開時期についても、OpenAIの提供終了予定日(2026年12月11日)に対して2026年9月24日と、3か月近い余裕を持たせています。移行に伴う会員データの整理や、教材の登録・AIの動作確認といった準備期間を利用者側に確保させる狙いがあったとみられます。

教材と考え方を登録した分身AIを、受講生へ共有する仕組み(公式サイト)

読者への示唆

外部プラットフォームの仕様変更・提供終了は、自社サービスの一部を他社の機能に依存している事業者にとって、常に発生し得るリスクです。今回のケースが示すのは、代替サービスを設計する際に「元の機能をそのまま再現する」ことと「代替先として何を保証し、何を保証しないかを明示する」ことは別の判断だという点です。AI Orchestraは後者を選び、全機能の自動移行や同一の回答を約束しない立場を明確にしたうえで、共有・会員管理・利用枠管理という運営者が実務で困っていた部分に絞ってサービスを組み立てています。

新規事業や新サービスの立ち上げを検討する読者にとっても、外部環境の変化をきっかけに事業機会を捉える際、自社が「何を代替できて、何を代替できないか」を早い段階で言語化しておくことは、利用者との信頼関係を保つうえで参考になる視点ではないでしょうか。

■株式会社AI Orchestraについて

名称  :株式会社AI Orchestra
所在地 :東京都豊島区西池袋3丁目28番13号IT tower TOKYO14階
代表者 :代表取締役 宮地 俊充
設立  :2020年5月1日
資本金等:1,000万円
事業内容:AIメディア運営、AI研修、Claude Code・Codex伴走支援コンサル、AIプロダクト開発
URL  :https://ai-orchestra.ai


株式会社AI Orchestra・2026年9月24日のプレスリリースより引用