株式会社LayerXは2026年9月7日、AIエージェントサービス「バクラク」シリーズの新プロダクトとして、AI人事労務サービス「バクラク人事労務」の正式提供を開始しました。同社はこれまで経費精算・請求書処理・勤怠管理・給与計算といったバックオフィス業務でAI活用を進めてきましたが、今回はその対象を人事労務領域全体、とりわけ年末調整の完全AI化まで広げた形です。
「バクラク」はすでに20,000社を超える導入実績を持ち、経費・請求書分野では実績を積んできたシリーズです。その延長線上で人事労務に本格投資した背景には、単なる機能追加ではなく、既存のバクラク勤怠・バクラク給与との統合によって「従業員情報を一元管理し、入社から労務手続き、給与計算までを一気通貫でつなぐ」という設計思想があります。人事マスタと給与マスタをExcelやCSVで橋渡しする運用は、情報の鮮度や転記ミスの温床になりやすい業務です。LayerXはここに手を入れることで、単発の効率化ツールではなく、複数のバクラク製品群を横断する基盤としての人事労務サービスを打ち出したことになります。
なぜ「年末調整の完全AI化」が正式提供の目玉なのか
今回の目玉機能は、2026年の税制改正に対応した年末調整機能です。源泉徴収票や生命保険・地震保険・社会保険料の控除証明書、iDeCo、住宅ローン控除の申告書・残高証明書などをAI OCRで自動読み取りし、複数の証明書類を一括アップロードした場合でも証明書ごとに分けて処理する仕組みを備えています。年末調整は、人事労務担当者にとって毎年恒例でありながら、書類の督促・確認・転記が集中し負荷が高い業務の代表格です。ここをAIが代替できることを示せれば、「バクラク人事労務」全体の説得力が一気に増すという判断があったと見られます。プレスリリースでは、次のように紹介されています。
「バクラク人事労務」は、2026年の税制改正に対応した年末調整機能を提供します。従業員にとって迷いにくく、初めてでも分かりやすい体験を提供するとともに、人事労務担当者の差し戻し、転記、確認作業を削減し、年末調整をスムーズに進められるよう支援します。
年末調整機能の主な内容
- 源泉徴収票、生命保険・地震保険・社会保険料の控除証明書、iDeCo、住宅ローンなどをAI OCRで自動読み取り(複数証明書の一括アップロードにも対応)
- 1枚の画像に複数の証明書が含まれる場合も、証明書ごとに分けて読み取り
- 源泉徴収票などの記載内容を申告情報へ反映し、手入力と転記を削減
- 住宅ローン控除は、申告書と残高証明書を読み取って控除額まで自動計算
「意識させないAI活用」という打ち出し方の意味
プレスリリースで繰り返し強調されているのが、「利用者が意識することなくAIの恩恵を受けられる」という表現です。従業員情報を適用日・履歴付きで管理する機能や、チャット的な問いかけだけで対象者を絞り込める「AIアシスト機能」、マイナンバーカードの画像から氏名・生年月日・住所を自動で読み取る入社手続き支援など、個々の機能は目立った「AI感」を前面に出さず、日常業務の中に溶け込ませる設計になっています。
「バクラク人事労務」は、日々の業務の中で、利用者が意識することなくAIの恩恵を受けられる、AIエージェント時代の新しい人事労務サービスです。
この打ち出し方は、AIツールを「使いこなす」ことを従業員に求めず、既存の申請・承認フローの延長として自然に機能を提供するという方針の表れと読めます。人事労務は法改正対応や個人情報の取り扱いなど慎重さが求められる領域だけに、AIを前面に押し出すより、既存業務フローの負担を静かに減らす形で受け入れられやすくする狙いがあるのだろうと考えられます。
先行トライアルを経ての正式提供という進め方
今回のリリースでは、先行して「バクラク勤怠」「バクラク給与」を利用していた企業の声も紹介されています。既存のバクラクシリーズを使っている顧客ほど、人事労務領域への機能拡張を歓迎しやすいという構図が見えます。
「バクラク勤怠」「バクラク給与」をすでに利用しており、人事労務まで同じシリーズでシームレスに連携できる点が導入の決め手でした。これまで複数のツールに分散していた従業員情報や人事労務業務を一元管理し、よりシンプルな運用ができることを期待しています。
いきなり全機能を市場投入するのではなく、既存顧客での先行トライアルを経てから正式提供に踏み切っている点は、法改正対応や証明書読み取りの精度など、人事労務特有の「間違えられない業務」に対する慎重な検証プロセスがあったことをうかがわせます。
読者への示唆
今回の「バクラク人事労務」正式提供は、単体の労務システムとしてではなく、経費・請求書・勤怠・給与という既存のバックオフィス基盤に人事労務を接続することで価値を出す、という設計判断が特徴的です。新規事業として単独の業務課題を解くのではなく、自社がすでに持つ顧客基盤・データ基盤の上に隣接領域を積み増していくという拡張の仕方は、複数プロダクトを展開する企業が新領域に参入する際の一つの型として参考になります。年末調整という「毎年必ず発生し、かつ負荷が高い業務」を最初の訴求点に据えた点も、機能の網羅性よりも顧客が実感しやすい痛みから着手するという優先順位の付け方として読み取れます。
■株式会社LayerXについて
名称 :株式会社LayerX
所在地 :東京都中央区築地1-13-1 銀座松竹スクエア5階
代表者 :代表取締役CEO 福島良典/代表取締役CTO 松本勇気
設立 :2018年8月
事業内容:AIエージェントサービス「バクラク」事業、資産運用サービス「ALTERNA」を提供するFintech事業、エンタープライズ向けAIプラットフォーム「Ai Workforce」事業、AIエージェントによるセキュリティ検証事業「AgenticSec」など
URL :https://layerx.co.jp/
株式会社LayerX・2026年9月7日のプレスリリースより引用