株式会社学研ホールディングスのグループ会社である株式会社Gakkenは、2026年9月3日、資格取得支援サービス「過去問 1st Studyz」内の新機能として、資格学習診断サービス「Career Karte(キャリアカルテ)」の提供を開始したと発表しました。第1弾としてIT系資格約150資格を対象とし、利用者一人ひとりの理想の将来像やキャリア目標から、学ぶべき資格とその優先順位、学習ルートを提案する無料サービスです。

何が発表されたのか

「Career Karte」は、転職やキャリアアップ、年収向上、専門性の向上といった「実現したい将来像」について利用者が回答すると、その内容をもとに適した資格や学習ルートを提示する診断機能です。単に資格を推薦するだけでなく、どの資格をどの順番で学ぶべきかを可視化し、キャリア形成から逆算した学習ロードマップとして示す点が特徴です。診断分析にはAIの一部利用があるとされています。リリース時点ではIT系資格に限定していますが、今後は対象分野を拡大する方針です。

Gakkenは同サービスの位置付けについて、次のように説明しています。

これまでの資格学習サービスの多くは「試験合格」をゴールとしていました。『Career Karte』では、学習のゴールを「理想のキャリアの実現」と位置付け、学びの成果を人生の成果へとつなげる支援を行います。

なぜ「合格」から「キャリアからの逆算」への設計転換なのか

今回の発表で編集部が注目したいのは、単なる新機能追加というより、資格学習サービスの土台となる「ゴール設定」そのものを組み替えた点です。Gakkenは開発の背景として、自社サービス「1st Studyz」の利用者を対象にした独自調査の結果を公表しています。

「1st Studyz」が実施した資格取得経験者への調査では、「資格選びで迷ったことがある」と回答した人は78.2%にのぼりました。

迷いの理由として最も多かったのは「どの資格がキャリア目標の実現に役立つか分からなかった」(19.6%)であり、「自分に向いている資格が分からなかった」(13.9%)、「将来性のある資格が分からなかった」(12.6%)が続きました。さらに、資格取得後に「思っていた資格と違った」と感じた経験がある人も24.0%にのぼり、その理由としては「想定していたキャリアアップ・昇進につながらなかった」(23.6%)が最多だったといいます。

調査から見えた課題の構造

これらの数値が示しているのは、資格選びの入口(どの資格を選ぶか)と出口(資格取得後にどうなりたいか)の両方で、学習者が「キャリアとのつながり」を見失いやすいという構造的な課題です。従来型の資格学習サービスは、人気ランキングや転職市場での評価といった「資格そのものの情報」を充実させる方向で発展してきました。しかしGakkenの調査結果は、情報量を増やすだけでは学習者の迷いや取得後のギャップは解消されないことを示唆しています。

この課題認識のもと、Gakkenは「どの資格が人気か」から出発するのではなく、「どんな未来を実現したいか」から逆算して学習計画を組み立てる設計へと転換しました。試験合格を最終ゴールに置く従来型の進路指導・資格学習支援の発想を離れ、キャリアという上位目標から資格・学習ルートを導き出す設計に切り替えた点が、今回の意思決定の核心といえます。

教育事業で培ったデータ基盤の転用

この設計転換を支えているのが、Gakkenが「1st Studyz」上に蓄積してきた学習・合格データです。同社は2026年7月にも、試験合格者の学習傾向を分析・可視化する「Study Intelligence」を別途リリースしており、合格者の学習統計をまとめた「DATA」と、10,000件以上の受験者口コミを掲載する「REVIEW」の2つのデータベースを提供しています。

「Career Karte」が個々の利用者に最適化した提案を行う機能であるのに対し、「Study Intelligence」は集合的な学習データを可視化する機能であり、両者を組み合わせることで「資格選びから学習戦略の立案までを総合的にサポートする」とGakkenは位置付けています。教育コンテンツ事業で長年蓄積してきたノウハウとデータを、個別最適化の診断サービスへ転用した格好です。

『Career Karte』の概要

・提供サービス:「過去問 1st Studyz」内
・リリース日:2026年8月7日
・サービス内容:資格マッチング診断サービス(AIを一部利用)
・対象資格:IT系資格 約150資格
・利用料金:無料

読者への示唆

新規事業の担当者にとって今回の事例が示唆的なのは、既存事業(資格学習コンテンツ)の延長線上にある機能追加のようでいて、実際には「顧客が何をゴールと感じているか」の再定義から出発している点です。Gakkenは自社データという裏付けをもって、従来の「合格」という分かりやすい成果指標から、測定・提示が難しい「キャリアの実現」という指標へとあえて軸足を移しました。この種の意思決定は、既存の成果指標が使い慣れているほど踏み切りにくいものです。自社サービスの利用者調査から課題を可視化し、既存のデータ資産を転用先の新機能に振り向けるという今回の進め方は、新規事業を検討する際の一つの型として参考になりそうです。

なお、診断結果や統計はあくまで公表情報や独自集計データに基づく参考情報であり、将来の転職・年収等を保証するものではない旨がリリース内でも明記されています。効果検証の詳細な数値は現時点では公開されておらず、実際の利用実績や成果指標の推移は今後の続報を待ちたいところです。

■株式会社Gakkenについて

名称  :株式会社Gakken(Gakken Inc.)
所在地 :〒141-8416 東京都品川区西五反田2丁目11番8号
代表者 :代表取締役社長 南條 達也
設立  :2009年1月13日(2022年10月1日商号変更)
資本金 :50百万円
事業内容:出版・コンテンツ事業、グローバル事業、医療・看護出版コンテンツ事業、園・学校向け事業、教室関連事業、EC・オンライン事業、広告事業
URL  :https://www.corp-gakken.co.jp/


株式会社Gakken・2026年9月3日のプレスリリースより引用