何が発表されたか
株式会社東京衡機は2026年8月21日、グループ会社である株式会社先端力学シミュレーション研究所(以下「ASTOM社」)と連携し、フィジカルAI関連の新規事業テーマについて、技術検証およびPoC(概念実証)に向けた取り組みを始めると発表しました。ASTOM社は2026年4月に「フィジカルシステム開発室」を新設しており、今回はその体制のもとで新規事業立ち上げに向けた具体的な検証段階に入ったことになります。
取り組みの対象となるのは、次の3テーマです。
1.生産工場ラインのデジタルツイン化
大型部材搬送等の工場ラインの挙動をデジタルツインプラットフォーム上で再現し、生産技術分野における工場固有の課題への活用可能性を検証します。
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2.簡易高速構造解析
デジタルツインプラットフォームを活用した高速・中精度の解析について技術検証を行います。従来は複雑または大規模であることから解析コストに見合わず、解析対象となりにくかった分野への展開可能性を検証します。工業製品分野では過去の社内プロジェクト等を活用した検証事例の作成を進めるほか、生産技術分野ではグループ会社である株式会社東京衡機試験機との協業も想定しています。
3.コンサルティング
顧客が抱える課題とデジタルツインプラットフォームの機能とのマッチングを支援するコンサルティングについて検討を進めます。デジタルツインプラットフォームの利用支援、顧客自身による開発の支援、受託開発等を想定しており、製造業・エネルギー分野を中心とした顧客への展開を検討しています。
なぜその選択をしたのか
今回の取り組みで目を引くのは、いきなり製品化やPoCへ進むのではなく、「ミニ試作・技術検証」という小さな単位で3テーマを並行して探索し、顧客への価値提示を通じて有望なテーマを絞り込む、という段階設計を採っている点です。東京衡機グループは持株会社体制のもと、構造解析や搬送系に関する技術・ノウハウを豊富に蓄積してきました。一方、ASTOM社はメカトロニクス技術と解析・予測技術を融合したシステム開発を強みとしており、現実世界と仮想環境を連動させる応用技術に実績を持っています。両社の技術を組み合わせる際、どの技術・機能が顧客価値に直結するかは、実際に検証してみるまで判断がつきにくい領域です。
そのため、単に自社の技術力を検証するだけでなく、顧客が抱える課題に対して他社にはないソリューションを提供できるかという観点から、有効な技術・機能を見極め、実際の顧客価値につながるテーマを選ぶ方針が採られています。背景には、デジタルツイン市場が今後数千億円規模への成長を見込まれているという事業機会の大きさと、大規模・複雑な工場ラインの再現や解析が従来は困難だったという技術的な参入障壁の両方があり、これらを踏まえて段階的に投資判断を重ねていく計画になっています。
デジタルツイン市場は今後数千億円規模への成長が見込まれており、当社はその中核技術を有することで競争優位性を確保し、従来困難だった大規模・複雑な工場ラインの再現や解析を、独自のAI技術で実現し、製造業・エネルギー分野の顧客課題を根本から解決することを目標とします。
当事業年度(2026年度)は3テーマのミニ試作・技術検証と顧客への提示・反応確認を行い、2027年度にはPoCの実施および初期顧客の獲得、2028年度にはプロダクト化および複数顧客への展開による事業化を計画しているとのことです。
読者への示唆
新規事業の担当者にとって参考になるのは、複数テーマを同時並行で検証段階に置き、顧客への価値提示という外部からのフィードバックを絞り込みの判断材料にしている点です。社内の技術的な強みだけを起点にテーマを選ぶのではなく、「顧客課題とのマッチング」を検証プロセスの中に明示的に組み込むことで、事業化に進める前に思い込みを検証する仕組みになっています。自社の技術資産を新規事業に転用する際、どの段階でどれだけの検証コストをかけて絞り込みを行うかは、多くの企業に共通する意思決定の論点であり、今回のように年度ごとの計画(技術検証→PoC→事業化)を区切って進める設計は、一つの参考例といえそうです。
■株式会社先端力学シミュレーション研究所について
会社名:株式会社先端力学シミュレーション研究所
本社所在地:〒112-0002 東京都文京区小石川5-5-5 プライム茗荷谷ビル5F
事業内容:ドローン試験装置開発、シミュレーションソフトウェア開発、AR/VR応用技術開発 他
代表:代表取締役会長 常木 優克/代表取締役社長 池田 貴
Webサイト:https://www.astom.co.jp/
■株式会社東京衡機について
会社名:株式会社東京衡機
本社所在地:東京都渋谷区桜丘町22-14 N.E.SビルN棟5階
代表者:代表取締役社長 小塚 英一郎
株式会社東京衡機・2026年8月21日のプレスリリースより引用