テラドローン、ドローン向け国産バッテリー事業に本格参入
- 2026/7/28
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Terra Drone株式会社(本社:東京都渋谷区、代表:徳重徹、以下テラドローン)は2026年7月27日、円筒形セルを用いたドローン向け高出力バッテリーパックの国内量産体制を構築すると発表しました。同社はこれまで産業用・防衛用ドローンの機体そのものを開発・販売してきましたが、今回はその機体の心臓部にあたるバッテリーを自ら国内で量産する体制に踏み出します。提携先は、日本の大手家電メーカー向けに最大累計約50万パックを供給してきた実績を持つ企業で、テラドローンが機体の要求仕様を定め、提携先が既存の設備・人材・量産ノウハウを活用して設計から組み立て、検査、品質保証までを国内で行う分業体制をとります。
自社の産業用・防衛用ドローンへの搭載にとどまらず、国内の他社ドローンメーカーや海外メーカーへの外販も見込んでおり、機体事業に次ぐ新たな収益の柱として位置づけています。
なぜ「機体メーカー」がバッテリー内製に踏み切ったのか
ドローン業界における部品調達の実情を見ると、今回の決断の背景が見えてきます。内閣官房の集計によれば、100g以上の無人航空機の国内登録数は2025年12月時点で44.7万台を超え、年平均15%以上のペースで増加しています。市場が拡大する一方で、産業用無人航空機の国際市場は中国企業が約9割のシェアを占めており、日本は部品供給網の多くを海外に依存している状態にあります。
特にバッテリーは、日本政府が「機体の稼働に直接影響する重要部品」と位置づけている部材でありながら、ドローン特有の円筒形セルを用いた高出力パックは、パソコンや自動車、医療機器向けの汎用品からの転用が難しいです。高出力・量産対応・価格競争力・防衛産業への即納品というすべての条件を同時に満たせる国内企業は現状ほぼ存在せず、中国や台湾など海外メーカーからの調達に頼らざるを得ないという構造的な課題がありました。
特定国が大きなシェアを有していることの影響により、過去には実際に海外メーカーで供給が滞った事例も指摘されています。(※1)
この一文が示す通り、特定国への調達依存はビジネス上のリスクにとどまらず、防衛用途では安定供給そのものが問われる問題になります。テラドローンが機体メーカーでありながらバッテリーの国産化に乗り出した背景には、こうしたサプライチェーン上のボトルネックを、自社で解消できる体制に置き換えるという判断があったとみられます。
ゼロから工場を持たず、既存の量産基盤を活用する
興味深いのは、テラドローンが自前で新工場を建設するのではなく、大手家電メーカー向けに累計約50万パックの供給実績を持つ提携先の設備・人材・ノウハウを活用する形を選んだ点です。要求仕様を定める役割に徹することで、量産の立ち上げリスクを抑えながら早期の供給体制構築を目指す設計になっています。国産化を急ぐ一方で、ゼロから生産能力を積み上げる時間的コストは負わない、という現実的な選択と言えそうです。
パウチセルではなく円筒形セルを選んだ理由
バッテリーの形式にも明確な意図があります。テラドローンはパウチセルではなく円筒形セルを採用します。円筒形セルは機械的な衝撃や振動への耐久性・安全性に優れ、世界的に採用実績が豊富とされる形式です。防衛用途で求められる高い信頼性を確保しつつ、米国のNDAA(国防権限法)が定めるコンプライアンス基準に沿ったノンチャイナ部品を用いることで、有事のサプライチェーンリスクも軽減できるとしています。同社によれば、防衛用ドローン電池としてウクライナでは円筒形セルが90%程度の市場シェアを保持しているといいます。
外販モデルと交換需要による継続収益
今回の事業は自社機体向けの内製にとどまりません。大手重工業企業や国内ベンチャー、海外ドローンメーカー、防衛プライム企業への外販も視野に入れています。バッテリーは訓練・運用・劣化に伴って交換が必要な消耗品であり、一般的な機体ではバッテリーが機体価格の4分の1以上を占めるとされています。機体の販売後も交換用・予備用としてのリカーリング需要が見込める点は、単発の機体販売とは異なる収益構造をもたらします。
読者への示唆
今回の発表は、単に「電池を作る会社になった」という話ではありません。自社の中核製品(ドローン機体)を成立させる重要部品の供給網に構造的な脆弱性があると認識したとき、その部品を外部調達に頼り続けるのか、あるいは提携という形で内製化に踏み込むのかという判断が問われる場面は、ドローンに限らず多くの製造業・ハードウェア事業に共通しています。テラドローンが選んだのは、自社で工場を新設する完全内製でも、これまで通りの海外調達継続でもなく、「要求仕様は自社が握り、量産の実行は実績ある提携先に委ねる」という中間的な設計でした。サプライチェーンの脆弱性に直面した事業が、垂直統合の度合いをどう調整するかを考えるうえで、参考になる事例と言えるでしょう。
※1:出典:内閣官房「重要物資に生じている安定供給確保上の課題」(2025年10月29日)
■Terra Drone株式会社について
名称 :Terra Drone株式会社
所在地 :東京都渋谷区
代表者 :徳重徹
事業内容:産業用・防衛用ドローンの開発、運航管理システム(UTM)の開発・提供等
URL :https://www.terra-drone.net/
Terra Drone株式会社・2026年7月27日のプレスリリースより引用
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