丸井グループの新規事業「SUKI」オリジナル商品第一弾

丸井グループ(本社:東京都中野区、代表取締役社長:青井 浩)が、新規事業「SUKI」のオリジナル商品第一弾を発表しました。岡山県倉敷市の職人と共創した商品で、2026年6月23日にブランドローンチイベントを開催し、翌24日から東京・日本橋の「SOIL Nihonbashi Hotel」で展示販売を始めています。プレスリリース単体では「新商品発表」の一報に見えますが、発表の仕方を細かく見ていくと、丸井グループがこの新規事業をどう育てようとしているかが透けて見えます。

■なぜ「地方工芸×海外発信」という事業テーマを選んだのか

SUKIオリジナル商品

丸井グループは2031年に向けた経営ビジョンとして「『好き』が駆動する経済」を掲げ、その具体策のひとつとして「SUKI」を立ち上げています。狙いは、海外の人々が「好き」と感じる日本の魅力を掘り起こし、世界に発信することです。祖業である小売・クレジットカード事業とは離れた領域に見えますが、「好き」という個人の情緒的な支持を軸にビジネスを組み立てる発想自体は、丸井グループが近年掲げてきた方向性の延長線上にあります。

このテーマ設定の背景には、地域の工芸や職人技術が抱える構造的な課題があります。SUKIは、その課題意識を次のように説明しています。

地域に根差したものづくりや文化には、優れた技術や価値がありながら、その背景や魅力が十分に伝わらず、継承や持続的な事業運営が課題となっているものもあります。「SUKI」は、一つひとつの商品の背景にある歴史や風土、つくり手の想いをストーリーとして国内外へ発信し、職人や地域が持つ価値を未来へ受け継ぐ循環づくりをめざします。

技術そのものよりも「背景や魅力が伝わっていないこと」を課題の中心に置いている点が特徴的です。商品を右から左へ流通させるのではなく、物語ごと届けることで単価と継承性の両方を高めようとする設計だと読めます。

倉敷ガラス 小谷栄次さん須浪亨商店 須浪隆貴さん

一つひとつ丁寧に手仕事で仕上げる、倉敷の職人たち
倉敷ガラス 小谷 栄次さん(左)
須浪亨商店 須浪 隆貴さん(右)

■なぜ「倉敷」の職人を第一弾の共創相手に選んだのか

第一弾の共創先に選ばれたのは、岡山県倉敷市の職人です。倉敷は商人の町として栄えた歴史を持ち、伝統的なものづくり文化が今も息づく地域として知られます。全国に候補地がある中で倉敷を選んだのは、単に技術水準が高いからというより、「歴史や風土をストーリーとして語れる土地」であることが決め手になったと見られます。SUKIが掲げる「背景や魅力を伝える」というコンセプトを体現するには、地域そのものに語るべき文脈が必要になるためです。

第一弾商品として発表されたのは、吹きガラス職人による一輪挿しと、イグサを使った壁アートの2点。それぞれに込められた技法と意味は、次のように名付けられています。

小谷氏による、吹きガラスの全工程を一人で仕上げた赤い一輪挿し「SUI(吹)」
須浪氏による、畳の素材であるイグサを力強く編み上げた壁アート「YORU(撚)」

「吹く」「撚る」という製法の動詞をそのまま商品名にする命名は、量産品にはない一点物としての価値づけを狙ったものでしょう。作り手個人の名前も併せて公開しており、商品の背後にいる人物を可視化することもストーリー戦略の一部と考えられます。

赤い一輪挿し「SUI(吹)」壁アート「YORU(撚)」

小谷氏による、吹きガラスの全工程を一人で仕上げた赤い一輪挿し「SUI(吹)」/須浪氏による、畳の素材であるイグサを力強く編み上げた壁アート「YORU(撚)」

■なぜ「イベント+ホテル展示」という発表・販売手法を選んだのか

もうひとつ注目したいのは、商品の見せ方です。丸井グループは6月23日、日本橋の「SOIL Nihonbashi」にあるリビングスペース「slo」でブランドローンチイベントを開催し、商品展示に加えて職人自身によるトークセッションを実施しました。会場では倉敷の歴史や職人の想い、商品開発のプロセスも合わせて展示し、単なる新商品発表会ではなく、地域文化を体感してもらう場として設計しています。

商品の制作過程や倉敷の地域文化、職人のこだわりを展示するスペース

商品の制作過程や倉敷の地域文化、職人のこだわりを展示するスペース。ものづくりの価値やストーリーを参加者に伝える

トークセッショントークセッショントークセッショントークセッション

つくり手と来場者をつなぐ対話の場となったトークセッション

さらに翌24日からは、近隣の宿泊施設「SOIL Nihonbashi Hotel」の客室空間に商品を展示し、宿泊者が実際の暮らしの中で商品を使ってみられる形で展示販売を行っています(販売期間は7月23日まで)。小売店の棚に並べるのではなく、生活空間に置いて反応を見るという手法は、ECや店舗を持たない新規事業が低コストで市場の手応えを確かめる「市場検証」の一形態と捉えられます。ホテルという非日常でも生活空間としての性質を持つ場所を選んだことで、購買前提の展示会よりも、暮らしに馴染むかどうかという生活者目線の検証がしやすくなっています。

■読者への示唆

新規事業として地域産品を海外に発信しようとする場合、商品そのものの磨き込みだけでなく、「誰が」「どんな背景で」作ったかを伝える情報設計が事業の差別化点になり得ます。また、量産・大量流通を前提とせず、ホテルという生活動線の中に商品を置いて反応を見る手法は、大きな販路投資をする前に需要を確かめたい0→1フェーズの事業にとって参考になります。プレスリリースの内容を鵜呑みにせず、「なぜこの発表の仕方を選んだのか」を読み解く視点を持つことで、自社の新規事業立ち上げにも応用できるヒントが見えてきます。

「SOIL Nihonbashi Hotel」

東京・日本橋人形町に2025年9月に開業した全14室のホテル。武田清明建築設計事務所が「路地裏園芸」という地域文化をコンセプトに設計し、屋上ファームガーデンなど緑あふれる空間を実現しました。周辺のワインショップやベーカリーカフェとも連携し、まちの日常を味わえる滞在を提供します。
https://soilis.co/nihonbashi/

SOIL Nihonbashi HotelSOIL Nihonbashi Hotel

「slo」

「SOIL Nihonbashi」2Fに2026年6月にリニューアルオープンした「まちのリビングスペース」。仕事をしたり、食事を楽しんだり、静かに本を読んだり。思い思いの時間を過ごせるリビングでありながら、ときにはイベントが開かれ、この場所ならではの出会いが生まれます。周辺の「SOIL Nihonbashi Hotel」を含む施設と連携し、このまちらしい文化や風景を少しずつ形づくっていきます。
https://soilis.co/work/slo/

sloslo

■丸井グループ
https://www.0101maruigroup.co.jp/

■SUKI公式サイト
https://suki-project.com/

■SUKI公式Instagram
https://www.instagram.com/suki_project_official/


株式会社丸井グループ・2026年7月21日のプレスリリースより引用